掲載日 : [2010-05-19] 照会数 : 4419
<読書>朝鮮文学の知性‐金起林 現在にも通じる精神的希求
金起林は1908年に咸鏡北道で生まれ、東京、仙台に計7年の留学を経て帰国、解放前後の激動期にモダニズムの立場から時代をリードした詩人・批評家、そしてジャーナリストである。6・25韓国戦争さなかの1950年8月に拉北されたまま消息を絶つまで、詩を中心に小説・戯曲・随筆・各種評論など旺盛な文筆活動を続けた。
彼の作品には植民地支配に対する怒りが滲み、健全な民族文化や民主主義に対する希求が漲っている。民族文化、狭くは民族文学と、侵略・排他主義に同化する民族主義文学を峻別し、提唱されるべき民族文学を民族国家の建設と、その遅れた近代化の過程を短期間に促進するものと捉えた。詩といい随筆・評論といい、現代の韓国人が耳を傾けてしかるべき知性の叫びに思える。
韓国では88年に『金起林全集』(全6巻)と『金起林選集』が刊行されて以降、様々な評伝や研究書が出版された。日本では金素雲訳編『朝鮮詩集』(岩波文庫)に収められた6編の詩を除けば、まとまった紹介は皆無と言われ、金起林について知る日本人や在日は少ない。
1930年からの主な作品が収録されている本書を一読して、あの時代にこんな韓国人がいたのかと驚かされる。日本で敢えて発行した意味は大きい。
(青柳優子編訳・著、新幹社 2400円+税)
℡03・5689・4070
(2010.5.19 民団新聞)