掲載日 : [2010-05-26] 照会数 : 4888
在日前史も鮮明に 映画「弁護士 布施辰治」完成
[ 大審院で弁護する布施辰治(左) 映画のワンシーンから ]
社会の底辺で虐げられた民衆の立場に立ち、多くの在日同胞に慕われた布施辰治弁護士(1880〜1953年)の生涯を描いたドキュメンタリー映画「弁護士 布施辰治」(池田博穂監督・同製作委員会編、1時間37分)がこのほど、完成した。完成有料試写会が28日、なかのZERO小ホールで開かれる。
映画は日本の敗戦直後の闇市から始まる。当時、定職を持たず、貧困のどん底にあった在日同胞にとって、ドブロクの密造は生きるための手段として欠かせなかった。布施弁護士は日本当局から摘発を受けた在日同胞のため、進んで弁護を買って出た。
2・8独立運動(1919年)では、出版法違反で起訴された留学生9人を無報酬で弁護した。関東大震災時の朝鮮人虐殺では、真相究明のため命を張って国家権力に立ち向かった。また、「大逆事件」(1926年)で起訴された朴烈、金子文子のために大審院で弁護に立ったことでも知られる。
韓国では、強制併合に反対した布施辰治の当時の激励の演説風景を、天道教会で再現した。全羅南道羅州では、朝鮮総督府の土地収奪に対して返還を求める農民から聞き取り調査するシーンも収めた。当時の農民の格好で布施弁護士に訴える地元エキストラの姿は、演技とは思えないほど真に迫った。
在日同胞と日本人の識者が多数映画に登場し、等身大の布施弁護士像を浮き彫りにしているところも見所の一つ。ドブロク事件当時、布施弁護士のカバン持ちを務めたという在日同胞の辛昌錫氏は、「弁護しても馬車賃(交通費)しか受け取らなかった」と清貧に甘んじた布施弁護士の人柄を証言している。姜徳相さん(在日韓人歴史資料館館長)はインタビューに応え、「当時の世相の暗さを見たとき、布施という存在のなんと明るかったことか」と語る。
池田監督は、「日本と韓国、アジアがもっと仲良くなれたらと思って製作に入った。布施さんのことは、知れば知るほどその人柄のとりこになった」と心情を語った。製作委員会にかかわった在日同胞からは、「この映画は私たち100年の歴史そのものだ。見ていて息ができなくなるかのような場面もたくさんあった。地元に帰ったら先頭に立って自主上映運動を進めていきたい」という声が聞かれた。
完成記念上映会の日程は当面のところ次の通り。入場料金は高校生以上一律1000円。問い合わせは「布施辰治製作委員会」(℡03・5840・9361)
(2010.5.26 民団新聞)