掲載日 : [2010-09-08] 照会数 : 4860
<読書>日韓、わが二つの祖国 運命の荒波に翻弄された男の航跡 機知と度胸の生き様
1941年に貧乏子だくさん家庭の4男に生まれ、韓日対立、南北相克の荒波にもまれながらも、韓国の遠洋漁業の発展を牽引し、「海の男」として生きた在日2世の自伝である。
家系の「血」であろう、貧しい祖国に貢献すべく「漁業報国」の精神で東京水産大学(現・東京海洋大学)に入学。「李承晩ライン」による韓日対立が激しい時代に、「韓水会(在日韓国水産系学生会)」を結成(63年)、翌年には韓日学生交流を実現した。だが、入学以来3年間も授業料を納めていない。そんな彼に、「5・16軍事革命の主体勢力」に連なる企業家からオファーが入る。卒業後、高麗遠洋漁業の第1号社員となってマグロ、スケトウダラ漁で成功を収め、韓日漁業紛争の解決にも貢献するなど、目覚しい活躍が続く。
ある時は、女と酒にうつつを抜かしてソ連のスパイに、またある時は、時局の犠牲となって北韓工作員に疑われもした。ロマンもあれば成功と挫折もある。「男の意地」「2世の意地」の見せ場も随所にある。そんな、韓日を股にかけて波乱万丈の半生をおくった筆者にして、故・新井将敬議員との交流に触れ、2世の寂寥を淡々と語ってもいる。
副題に「荒波に翻弄された」とあるが、そこにはむしろ機知と度胸で荒波に立ち向かう痛快な生き様があった。
洪性坤著
中経出版(1600円+税)
℡03・3262・0371
(2010.9.8 民団新聞)