


医食同源 配色の妙
美味で 伝統の知恵の結晶
陰陽五行の思想に基づいて作られる宮廷料理に感銘を受け、韓国の「宮中飲食研究院」で学んだ在日韓国人2世のキム・ソンボク(金成福)さんは、宮廷料理の深さをさらに知りたいと、08年に国際薬膳師の資格を取得した。現在、東京・世田谷で、季節の薬膳の考え方に基づいた韓国宮廷料理を提供する薬膳レストラン「福」を経営するとともに、「韓国料理と薬膳の会」を主宰、宮廷料理や精進料理の寺刹(サチャル)飲食などを薬膳的に教える料理教室も開催する。宮廷料理の素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと話す。(インタビュー構成)
韓国宮廷料理と出会う以前に、ある講演会で、韓国料理は素晴らしいという話を聞いてカルチャーショックを受けました。そこまで体にいいとは知りませんでした。それでもっと知りたいと独学しました。
でも一人で勉強するには限界があり、本格的に学びたいと思い始めた時期と、経営していた飲食店を閉めた時期が重なり、このときしかできないと考え、韓国の「宮中飲食研究院」に行きました。フードコーディネーターの勉強もしましたが、宮廷料理は素晴らしい配色です。最初、九節板のあまりの美しさに驚きました。
色の相関と言って、色を引き立たせる組み合わせがあります。宮廷料理は赤、緑、白、黄、黒の5色で成り立ち、盛りつけがきちんと5色で配色されています。5色というのは人間の5臓の色でもあります。そういうことを昔から考えて作ったというのは、陰陽五行の思想が根づいている国だから。その素晴らしさに虜になりました。
さらに分かったことは、肉類のダシと、魚介類のダシがブレンドされている料理だということです。
ちょうどよく体温を整える
中国の中医師は、体が温かくなったら冷ます食材をと教えてくれますが、韓国料理は最初からいろいろな材料を使うことによって、5性(熱、温、平、涼、寒)の中央である平になるような状態になっています。体は熱くも寒くもなく、真ん中になるのが一番です。牛肉は平なので、韓国ではほとんど、ユッス(牛のスープ)をブレンドしたダシをよく使います。
それに日本では馴染まれていませんが、肉は必ず水に漬けて血抜きをするなど、宮廷料理は科学的にも、健康面においても優れた料理法で作られることも分かりました。 薬膳の勉強を始めたのは50歳を過ぎてからです。韓国の医食同源は、食事で健康になるという考え方で、それは薬膳も同じです。体系的にきちんと学べたことは大きかったですね。
韓国の寺の精進料理であるサチャルも勉強しました。サチャルのなかに決明子(けつめいし)と菊を煮たお粥があります。春先の肝に効く食材ですが、先生から説明を受けなくても、ぱっと見て分かります。そういう料理が常日頃から、韓国では食べられている。だから医食同源なんです。昔の方はこういうときには、これを食べるということを理解して食事を作っていた。本当に凄いことです。
これは韓国伝統菓子の韓菓の色づけも同じで、黒は黒ゴマや黒豆、赤はペンニョンチョ(百年草)といったように、その材料自体が韓方薬であり、全ての材料が医食同源です。動物性を一切、使わず世界に類を見ないものです。
宮廷料理は本来、下準備に時間がかかるものです。料理教室での下ごしらえは私がしますが、以前、9種類の干しナムルを戻すのに3日間かかりました。でも今の人は忙しいので、そんなに時間をかけられません。
また、炭を起こして焼くなどといったことは大変なので、今の生活様式に合わせた調理方法などを教えています。
本格的な調理簡単に作ろう
宮廷料理をご家庭で美味しく、親しんでもらうために、本格的な宮廷料理を簡単に作るように教えるのが課題です。
「韓国料理と薬膳の会」は、一般の方が勉強して、家で役立ててほしいという趣旨で行っています。昨年、冬に行った1回目では「腎の養生」をテーマにしました。冬は5臓で見ると腎の季節です。だから腎臓にいい、滋養になるものを極力摂って、冬を過ごしやすくする。薬膳とは、そういう考えです。
以前、私が考えた料理ですが、解毒作用があり薬効の高いクチナシを使った、夏のパジョンなどを作りました。宮廷料理と薬膳をトリミングした、オリジナル料理を考案しています。
今、やればやるほど、もっとという気持ちです。薬膳をさらに極めるための、中医学の勉強をしています。
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薬膳レストラン「福」 東京都世田谷区奥沢5丁目。12〜22時。完全予約制。コース(おまかせ)6300円から。1週間前から予約受け付け。休み不定期。料理教室も開催。
第2回「韓国料理と薬膳の会」 4月16日昼12時半〜(定員13人)、夜17時半〜(定員14人)。場所は「福」。テーマ「肝の養生について」。講師は菅沼栄さん(中医師)。料理はキム・ソンボク同会会長。会費7600円。締め切り4月2日。要予約(先着順)。いずれも問い合わせは(℡/FAX03・3723・6055)。
(2011.3.8 民団新聞)