
近年、韓国経済の発展ぶりは目ざましいものがあり、特に電機・電子分野で著しい。ところが、韓国工業の躍進の源泉を「戦前植民地期からの工業化の結果」とする意見がある。堀和生の『朝鮮工業化の史的分析』がその代表で、本書はそれに対する反論を試みている。
タイトル「朝鮮・韓国…」の朝鮮は日本植民地期の呼称であり、韓国は解放後の国家を指す。工業化の基盤である電力事業の資本と人材の蓄積に関して、大戦前の植民地期と解放後は断絶されたというのが著者の結論だ。
朝鮮電気会社の資本形成過程を考察する上で、「上から」もしくは「戦争」の影響を検討した結果、借入金の拡大が総督府や軍部、日本政府の指示によるものであった。この視点が堀和生に欠落していると、著者は指摘する。
人的資源も同様だ。植民地下で電力事業に携わった韓国人高級職員は数人にすぎない。解放後、電力事業を支えたのは、米国の援助や借款をもとにした新たな資本や教育システムであった。そのわずかな蓄積も、1950年の韓国戦争によって壊滅的打撃を受け、「断絶」を体験した。
日本からの資金が韓国電力に流入したのは、65年の韓日国交正常化を境にしてであった。現在、原子力発電が注目される中、電力事業史の一端を垣間見ることができる。
李光宰著、小林英夫編著
つげ書房新社
(3000円+税)
℡03(3818)9270
(2011.9.7 民団新聞)