
64歳にして大阪府立布施高等学校定時制に入学した「浪速のおかん」こと金参禮さん(72)の泣き笑い人生奮闘記だ。
数学は義務教育時代に習った加減乗除しか知らなかったところへ「サイン」、「コサイン」、「タンジェント」という未知の世界に迷い込みチンプンカンプン。「何のこっちゃー」と、しばしため息。英語もついて行けず、中学時代の文法からやり直したという。
だが、定時制に進学したからにはいい点をとらないと気がすまない。1年ほど経つと通知表に日本史を除くほぼすべての科目で5段階評価の「5」が並び、卒業時には卒業生を代表して答辞を読んだ。
金さんは在日2世。家庭の事情から中学を終えると働きに出た。当時の日本社会は在日韓国人を喜んで受け入れてくれる職場など少ない。やっと採用してくれた下請け工場では人一倍努力し、いわれなき蔑視の視線を跳ね返してきた。結婚してからはコツコツお金を貯めて夢のマイホームを手にし、ようやく念願だった高校生活を実現した。
金さんは還暦を過ぎてからも朝は5時30分起きで家族の食事を準備し、昼間は駅前のホテルで清掃のパート。体の節々が痛むなかでも、大好きな学校だけは1日たりとも休まなかったという。読者に明日を生きる元気を与えてくれることだろう。
金参禮著
清風堂書店
(1000円+税)
℡06(6313)1390
(2011.9.7 民団新聞)