


東洋の伝統を基本とした独自の創作舞踊で日本はもとより、世界各地での公演も大成功させた「伝説の舞姫」崔承喜(1911〜69年)の生誕から今年で100周年。これを記念する写真展、講演などのイベント(韓国文化院・在日韓人歴史資料館共催)が、東京・新宿の韓国文化院で12日間にわたって開かれた。今月24日の誕生日を前後しては、韓国と北韓でもシンポと公演が予定されている。
東洋哲学に創作の源泉
「貫いた志」に改めて感銘
写真展は10月29日までの12日間、韓国文化院のギャラリーM1で開催された。展示写真は在日2世の河正雄さんが、「在日としての私たちの歴史の真髄」との執念で収集したもの。光州市立美術館に寄贈した200点のなかから約50点を主催者が選んだ。文化院関係者によれば会期中、来場者が絶えることはほとんどなかったという。大学で崔承喜を研究しているという若い学生の姿も見られた。
「僧舞」、「杖鼓の舞」、「菩薩像」、「王の舞」といった貴重な写真の数々は、崔承喜が創造した芸術の一端を伝えてくれる。たぐいまれな美貌と、女性としては大柄でふくよかな肉体。その一挙手一投足が、雄弁に語りかけてくる。韓国舞踊家の金順子さんは、「情報に乏しいあの時代、世界各国の舞踊文化を身をもって体験し、多彩な表現をなしえたのはすごいこと」と話す。
漂よわせた民族の匂い
在日韓人歴史資料館の姜徳相館長は、作家の川端康成が指摘した「彼女一人にいちじるしい民族の匂い」(『文芸』1934年)を引き合いに、「『鮮人のくせに』に代表される差別と蔑視が一般的であった植民地時代でも、天賦の才能は否定しようがなかったのである」とプログラムに記している。
展示写真のなかに、ベルリンオリンピック(1936年)のマラソン優勝者、孫基禎氏とカメラに収まった珍しい写真があった。場所は東京の焼き肉店、明月館とのこと。これも「民族の匂い」がもたらした出会いなのだろうか。
22日には直木賞作家で『さすらいの舞姫‐北の闇に消えた伝説のバレリーナ・崔承喜』の著者、西木正明さんが「崔承喜の生涯」と題して講演。1945年の光復と同時に帰国した崔承喜はソウルで「日本の手先だった」との指弾から逃れるように、家族がそれぞれ越北した。
韓日双方に才能愛され
西木さんは「金日成に歓迎されたのもつかの間、先に夫、60年代に崔承喜が粛清されたようだ。波乱万丈の人生であったが、みずからの志を失わず、日韓双方から愛された。いずれ米国が行う情報公開を待って彼女の消息を知りたい」と締めくくった。
続いて25日には「崔承喜の波乱の人生」を掘り起こした映像が上映され、韓国舞踊の公演もあり、会場のハンマダンホールは定員の300人を超える予約客でいっぱいになった。
チケットを持たなかったため、入場を断られた女性もいた。わかち愛さん(70、東京)は、「戦争中のあの時代に多くの人に認められたのはすごいこと。一口に言ってすごい人」と印象を語った。
28日には河さんが「崔承喜誕生100周年日本展に寄せて」と題して講演した。
世界が称賛のコリアン・ダンサー
崔承喜は西洋の現代舞踊やバレーも摂取したが、最終的には東洋の思想と哲学に基づくまったく新しい舞踊芸術を創造した。西洋の文化にあこがれ、これを吸収しようと躍起になっていた往時の日本では異質な存在だった。
舞踊芸術の基本としたのは韓民族本来の伝統的な歌舞遺産だった。その遺産を基本動作や歩行、手や肩、脚などについて理論化・体系化し、発展させた。日本の能、琉球や蒙古、中国の舞踊と伝統文化などからもインスピレーションを得た。
1927年、17歳で日本デビュー。人気絶頂期の1937年からはサンフランシスコを皮切りに世界各国で公演を成功させ、「東洋の舞姫」から「世紀の舞姫」と呼ばれるようになった。フランス公演ではピカソやコクトーなどといった文化人・芸術家が東洋からやってきた「コリアン・ダンサー崔承喜」を一目見ようと劇場に足を運んだという。
欧米での公演から日本に戻ると、軍部からの目に見えない圧力を受けて中国で前線慰問を行った。1944年の帝国劇場公演ではたった一人で20日間ものロングラン公演を成功させた。 lesbian gay movies collection
光復後、先に越北していた夫の安漠の求めで北韓に渡り、舞踊研究所を開設。毎年300人近い後継者を養成してきたが、69年に死亡したとされている。
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2社から記念CD
崔承喜の歌と舞踊音楽を収めたCD「崔承喜の芸術世界」が24日、ネット通販大手のアマゾンジャパンと、コリタメ(℡050・3536・7755)の双方から発売される。
主な曲目は崔承喜の自伝ともいうべき映画「半島の舞姫」の主題歌「郷愁の舞姫」(西条八十作詞、崔承喜作曲)、「祭りの夜」(西条八十作詞、仁木他喜雄作曲)、「イタリーの庭」(イ・ハユン作詞、R・エルウィン作曲)など15曲。特典DVD「崔承喜の舞踊世界」との2枚セットで4000円。
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讃フェスティバルも
関連して12月21日には民族舞踊発展の功績に焦点をあてたイベント「崔承喜讃フェスティバル」が東京の文京シビックホールで開催される。チケット3000円。申し込みは住所、氏名、連絡先を明記したうえでFAX(042・499・8362)で申し込む。問い合わせはコリアアーツセンター(℡042・483・8142)。
(2011.11.2 民団新聞)