

先祖から伝わった数々の美風
韓国の陰暦の1月は、最も民俗的行事が多い月。新年を迎えて、初めての満月の日である15日(今年は2月6日)をテボルム(小正月)と言う。地方や家庭によって多少異なるが、先祖代々、楽しんで迎える名節である。
初満月に祈る テボルム
薬食のルーツ? 五穀飯も
硬い実かじり「泰平無事」を
テボルムの早暁には生栗、クルミ、松の実、銀杏をかんで、庭先や屋根の上に投げ、「ブロム出て行け」と唱える。
このとき1年間、泰平無事で過ごし、できものや腫れ物ができませんようにと祈る。
『東国歳時記』によると、これは嚼 (チャクジョル)または「固歯之方」と言い、特に子どもたちの枕元には硬い食べ物を用意する風習だ。
14日の小ボルムから代表的な歳時食の五穀飯と、9種類の陳菜ナムル(しらやまぎく、乾燥かぼちゃ、わらび、ぜんまい、ききょう、干したナス、大根の葉を乾燥させたシレギなど)を用意する。
テボルムに五穀飯と9種類のナムルを食べると、暑気あたりしないと言われ、1日に何度も食べる。また、もち米を蒸し、ナツメ、栗、ごま油、蜂蜜、醤油などを混ぜ、さらに蒸した薬食を食べる。上元の時食であり、昔は祭祀に供え物とした。これは新羅時代からの古俗である。
五穀飯の風習は、この薬食の由来が源泉ではないかという説もある。
当初は『東京誌』として刊行され、1669年にタイトルを変更して増刷された『東京雑記』や『三国遺事』によると、新羅21代 知王が、陰暦1月15日、王が天泉亭に行幸した際、飛んできた鳥の後を追って行き着いた池から老翁が現れ、渡された奉書により禍を免れ、15日を鳥忌日と定めて、もち米を炊いて祭祀で報恩の意を表したとある。
今日の風俗では、これが薬食の名で時節食となり、普段の伝統菓子類としても重宝されている。
こんな行事も 残したい
今日に至るまでに廃れたものもあるが、多少、変化しながら現存している民俗、禁じられたものを取り上げてみる。
①迎日(タルマジ)は月が東の空に昇るころ、裏山に登り月を出迎える。かがり火を地に突き立て、合掌して祈った。農民は農作を祈り、若い男女は良縁を祈る。子どもらは進学や良い子になることを祈ったのだろう。
②踏橋(タプキョ)は、脚が丈夫になるという風習で、テボルムの夕暮れに人々が橋を12往復すると1年間、足を患わないとされた。
③15日の朝、耳病も患わず、1年中、嬉しい消息が伝わるとして冷酒を飲む。飲めない人は飲む真似をする。
④今日では禁止され、消滅した尚武精神を養うための石戦を、知る人は少なくなった。
⑤暑さ売りは早朝、誰かに出会ったとき、相手より先に「私の暑さを持って行け」と叫ぶことで、その年は暑さに負けずに健康に過ごせるという、1月の面白い習俗だ。
⑥ユッノリ(擲栖)/ユンノリは、今でも季節に関係なく遊ぶ。室内ではもちろん、庭先や路地裏でもムシロを敷いて、ユッと呼ばれる4本の木の棒を投げる。落ちたときの面の向きで、駒の進む数が決まる。ユッが裏になったり、表になったりする度に、かけ声をかけて皆で楽しむ。
私達の役割で後世に伝えて
これらの民俗は時代の流れとともに薄れ、記憶からも消えかかっている。先祖が残した古き風習や慣習を知ることは、韓国人の心を知る手がかりとなる。後世に伝えていくことが、私たちの役割ではないだろうか。
(2012.1.25 民団新聞)