
新羅時代に韓半島史上初の女帝として君臨した善徳女王(第27代、在位632〜647年)の実像に迫ろうとする著者の執念がすごい。ここには、同時代に活躍した金春秋や金信という2人の傑出した英雄に比べ、女性にことさら厳しいまなざしを向ける現代の歴史学者への著者なりの異議も含まれているようだ。
韓半島には歴史上、3人の女帝が存在した。その業績はこれまで正当に評価されてきたとはいえない。善徳女王は、「脆弱な政治力ゆえに仏教に帰依し、国家財政を破綻に追い込んだ」とされている。善徳を継いだ真徳女王に至っては「淫乱で政治力に欠け、新羅滅亡の元凶」と、あからさまな女性蔑視さえ感じられる。
著者は『三国史記』と『三国遺事』、筆写本『花郎世紀』を史料の中心にすえ、女性らしい緻密な視点で善徳女王の偉業をイキイキと描く。
たとえば、「星の数ほど」寺院を建立したのは、女王の無力さを意味するものではないという。寺院が建てばその周辺には人も、お金も集まる。政策の要は「市場経済の活性化」だったと説く。さらに、仏教を通して民衆に道理を教える「教育」や、有事に出陣する僧兵を育てる「国防」の目的もあったと見ている。
善徳女王を祀る符仁寺(大邱市)では毎年3月15日(陰暦)に「崇慕祭」が1500年前から続いている。
キム・ヨンヒ著
キネマ旬報社
(2100円・税込)
℡03(6439)6462
(2012.4.25 民団新聞)