
副題は「私が見た『北朝鮮』」。「初訪朝‐私が見た、幻の祖国」「こころが祖国に根を生やしている‐朝鮮は霧の国だった」「太陽節と国際マラソン大会‐8月の果て」、および本書の大半以上を占める「家族と故郷‐息子を連れての訪朝」の4章からなる。
初訪朝は2008年10月(10日滞在)、2回目は10年4月(13日滞在)。案内人のほかに、いずれも総連機関紙「朝鮮新報」のベテラン女性記者が行動を共にする。
3回目は10年8月。夏休みの息子および同居人と一緒に11日間滞在。板門店見学は総連の朝鮮大学校の学生たちのバスに乗せてもらい実現。平壌から白頭山までの飛行機とバスも朝鮮大学校の学生たちと一緒で、彼らが登山のガイド・通訳を引き受けた。
出会ったサラム(ひと)への眼差しは温かい。著者は3回の訪問だけで北朝鮮の現状を論ずる資格はないとする。この一冊から「金日成朝鮮王朝」への批判を期待したり望んではならない。訪朝を重ねることで、どう論じるのか。批判にまで至るのかどうか。新たな「訪朝記」を待ちたい。
本書では韓国の国籍を有しているのに、なぜ北朝鮮を「祖国」と思うのか。日本に帰化しないのはなぜか。なぜ息子を連れての訪問なのか。在日2世作家の家族への思いなどを知ることができる。
柳 美里著
講談社
(1500円+税)
℡03(5395)3522
(2012.6.13 民団新聞)