
植民地統治時代に不法に奪われた文化財とはいえ、相手は日本の宮内庁。請求権の消滅で、韓国政府は表だって返還を要求できない。韓国の一民間団体が『朝鮮王室儀軌』を取り戻すのは「卵で岩を打つようなもの」だったという。この4年間にわたった還収運動の全容が「韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議」の手で日本語版になった。
日本政府による返還の実現は誰もが予想できなかったこと。しかし、若き僧侶慧門師は文化財還収運動を金剛経に登場する「チェジャリ探し」(失ったものを本来あるべき場所に戻す)と位置づけ、2010年の韓国併合100年に合わせた4年間の緻密な戦略を練って、見事に実現させた。成功のカギは、日本の国会議員への地道な働きかけだった。「日本が過去を反省するとすれば、『儀軌』の返還はすべての問題をただす歴史的な課業」と主張し、野党から与党へ1人ずつ賛同者の輪を広げていった。やがて日本の世論の共感を得て、日本政府をも動かした。
慧門師は06年、福岡市の櫛田神社を訪れ、明成皇后を刺した肥前刀を確認した。「王妃を殺害しただけでも足りず、葬礼式を記録した文書すら加害国の皇居に人質として捕らえられている」と、怒りを覚える。この怒りと仏教哲学的な信念という魂を込めた卵が見事、岩をも砕いたのだ。
彗門著、李素玲訳
東國大学校出版部
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(2012.6.13 民団新聞)