
本書は「白磁の人」と呼ばれ、植民地統治下の韓国で民衆から愛された浅川巧の人間的魅力と彼を育てた郷土を語り、小説『白磁の人』の映画が、8年もの曲折を経た経過を綴っている。
兄の伯教と巧は、幼いころから文化人で篤志家であった祖父と、母方の祖父の生き方を模範にしたと言われる。巧が高潔と言われたのは、自分においても他人に対しても、地位や名誉を一顧だにしなかったからだ。巧の人格を形成した背景には、青年期にかけて出会った人物たちの影響が少なくない。
巧は23歳で渡韓し、林業技術者として韓半島の山林を再生させ、その一方で、「日常器」である白磁に注目し、収集研究した。韓国白磁の美などを伝えた柳宗悦、伯教との関係は同士のようだ。
巧は当時、韓国人と生活様式を同じくし、民衆の苦しみに寄り添った。40歳で亡くなった最期の一言が「私には責任がある」だった。他民族が他民族を侵した過ちを反省し、歴史を真摯に見直すことこそが巧が自覚した「責任」であり、さらに生活用具に込められた民衆の情味を記録し、保存する「責任」があった。
映画の完成までには、歴史認識問題の葛藤など幾度も試練を乗り越えた。「巧の『責任』を映画で描き出したい」。関係者の一途な思いが伝わる。
小澤龍一著
合同出版
(1400円+税)
℡03(3294)3506
(2012.6.13 民団新聞)