北韓難民との連帯を試みて中朝国境の町、延吉に1年間滞在した在日2世ジャーナリストによる愉快で、そして人情味あふれる見聞記だ。著者が意気込む北韓民主化への取り組みを期待していたら、見事に裏切られることだろう。著者が延吉で脱北者との間で繰り広げる日常のドタバタ劇をこそ楽しみたい。
延吉の町は不衛生で、在日はすぐにはなじめないはず。ところが、1週間もしたらハエが飛び交うなか、小石が混じる丼飯を平気で平らげ、独学で延吉なまりの朝鮮語まで習得してしまうたくましさ。さすがに、焼き飯のなかにゴキブリを発見したときだけは、しばらくその店から足が遠のいたようだが。
脱北の闘士と肩を組み、飲めない酒を無理強いされて吐きながら、血気盛んでけんか早いとされる「一種のヤンチャ社会」もしっかりルポしている。その視線は低く、共感できるところが多い。
特に残飯をあさる北韓から逃れてきた難民の子、いわゆるコチェビに注ぐ視線が優しい。手持ちの食糧を分け、幾ばくかの紙幣を手渡す。もちろん、その場しのぎの自己満足かもしれないが、「あなたたちは孤立していないんだ」との著者の思いはしっかり伝わったことだろう。帰国を前にお金を渡しすぎ、あやうく空港税を払えなくなりそうになったというオチがつくが。
高英起著
新潮社(1300円+税)
℡03(3266)5111
(2013.3.20 民団新聞)