
世の中に「運命」の出会いを体験をした人は、どれほどいるのだろう。韓国伝統舞踊家でありながら、四国霊場13番札所「大日寺」(徳島市一宮町)で住職を務める著書はまさにそのひとり。
1976年から韓国舞踊界の第一人者で、人間国宝に指定されている李梅芳さんに師事。88年に仁川市に自身の舞踊団を設立し、05年に韓国文化財庁から「僧舞」の人間国宝次期継承者に指名された実力者だ。
「踊りと結婚」したつもりだった。95年、徳島で開かれた韓国舞踊公演で大日寺の住職、大栗弘榮さんと出会い、お互いにひと目ぼれ。弘榮さんから数カ月後、プロポーズされたが、キャリアか結婚かで悩んだ。弘榮さんはすぐさま韓国に飛び、「あなたの踊りの人生は、私に任せなさい」の一言で決断。入籍するまで、18歳も年上だとは知らなかったという。
07年4月、弘榮さんが68歳で亡くなった。韓国に帰国するつもりの著者を押しとどめたのは息子(9)の言葉だ。四国88カ所初の外国人女性住職。良くも悪くも評判にならない訳がない。
くじけそうな心を支えたのは、生前、弘榮さんが日々、著者にかけた感謝の言葉だ。「僧舞を踊っていたら、本当の僧侶になった」と話す著者の人生もまた、運命によって決められていたに違いない。
金昴先著
PHP研究所(1000円+税)
℡03(3239)6227
(2013.5.29 民団新聞)