
本書に収録された8人は、脱北者である著者の友人だが、日本から北に帰り、悶え苦しんだ挙句、非業の死を遂げた者ばかり。無念の思いを代弁する形で、北の現実を詳細に記した実話小説だ。
北の地を踏み、宣伝に聞いた社会主義のイメージとはまったく逆の社会に、まず驚かされる。目にあまる役人の不正、人々の労働意欲のなさ。帰国者への謂われなき過酷な処遇に、期待を裏切られ、人生を踏みにじられた悔しさが行間からにじみ出る。
国や社会に対する意見や不平は反逆罪とみなされ、総連の幹部だった者も平壌から追放され、虫けら同然に踏みつぶされる。自殺すら許されない。反逆罪として家族に累が及び、すべて収容所行きとなるからだ。
運行本数の少ない列車には人が殺到し、常に超満員の状態だ。列車から人が落ちても、屋根の上で感電死しても、素知らぬ顔で走り去る。読み進めながら、これほどの人権蹂躙が平気でまかり通る現実に憤りを感じ、何度も胸を塞がれた。
1959年から「帰国運動」が始まり、9万3000人を超す総連同胞が北へ送られた。地獄の淵に突き落とされた同胞の実情を、総連幹部たちは知ることができたのに、それを一般同胞に一切知らせず、北に送り続けた彼らの罪の深さは底知れない。
韓錫圭著
新幹社(2000円+税)
℡03・(5689)4070
(2014.4.9 民団新聞)