
北韓は慢性的な経済の窮乏にもかかわらず、なぜ核・ミサイルを駆使し、国際社会の反発を無視して武力挑発や対南威嚇などを繰り返すのか。なぜ、餓死者が出るほど経済が窮しているのに体制が崩壊しないのか。
著者は、金正恩の視界に入るのは「平壌市民」など労働党や軍の幹部ら「出身成分の良い」選ばれた特権階級だけで、地方で貧困と慢性的な食糧不足にあえぐ庶民の姿はない、と断じる。
なぜなら、徹底した「24時間の相互監視システム」下におかれ、毎日食べて生きていくのに精一杯の庶民には、体制を脅かす行動を起こす気力はない。地方を貧しいままに放置しても、体制を転覆させるような蜂起につながらないと考えるならば、一握りの特権階級の忠誠さえつなぎ止めておけば体制は安泰という独裁政権の論理が成り立つ。
しかも、平壌の特権層は、最高指導者の不興を買えば、どんな有力者でも一日にして転落する運命が待っている。一度、既得権の甘い蜜を吸って「運命共同体」となった党や軍の幹部たちは、最高指導者への忠誠を競い合って懸命に体制を支えていくしか選択肢はなくなる。
「人民が二度と生活を切り詰める必要がなく社会主義の栄華を十分に享受できるようにする」との金正恩初演説(12年4月)も口約束にすぎない。
山口真典著
日本経済新聞出版社
(850円+税)
03(3270)0251
(2014.11.26 民団新聞)