掲載日 : [2004-04-30] 照会数 : 3120
<読書>書籍紹介
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となりのコリアン
「拉致問題」以後再び暴力等のターゲットに
在日コリアン研究会 編
(日本評論社1700円+税)03(3987)8621
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北韓が引き起こした日本人拉致問題以降、北韓当局に対する憎悪が、日本社会に沈殿している。核問題の恐怖も脳裏から離れない。その状態は決して正常とは言えない。解決の糸口もなかなか見えない。
しかし、だからと言って日本に住む在日の子どもたち、とりわけ本名を名のっている子どもたちや、民族衣装を着て出自を明らかにしている朝鮮学校の子どもたちが、暴力などのターゲットにされていいはずがない。
本書は日本の若手弁護士が、拉致事件報道以降に朝鮮学校に通う子どもたちに対して実施した嫌がらせ実態調査を元にしている。
ページを開くと、朝鮮学校の生徒というだけで、心ない大人から恐怖を味わわされた子どもたちの痛みが、肉筆で迫ってくる。幼い心に受けた傷は誰が癒すことができるのだろうか。
それでも子どもたちは、けなげにも「日本人と仲良くしたい」というのだ。「(韓国・朝鮮と)千年後も隣人であり続ける」という元ジャーナリストの言葉に対する答えが、このシンプルな言葉で言い尽くされていると思った。
「在日」の問題は、日本人の問題である、という視点から、本書では弁護士、ジャーナリスト、民族教育関係者らが論を進めている。「在日」を取り巻く基本的な問題の解説もなされている。一読を勧めたい。
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韓国式発想法
韓国ファン化し韓国人との輪を広げる一助に
館野 著
(NHK出版660円+税)03(3780)3339
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「韓国人の率直で明快かつ裏のない人柄に魅せられた。なぜ韓国に入れ込むのかと聞かれると、韓国が好きだからと答えている」という韓国問題研究家の館野氏。
韓国を愛してやまない館野氏が「韓国を理解するのに役立ち、新しい韓国ファンが増え、韓国人との楽しい付き合いの輪が広がっていけば」と願い上梓したのが本書だ。 本書では、著者の韓国についての豊富な知識と韓国での体験に基づき、文化や社会事情、そして韓国人の気質や人間関係、韓国の仕組みや韓国の未来などについて分析がなされている。
分析の材料と対象は実に多岐に渡っていて、宿で韓国人男性と一つの布団で寝ざるを得なかったというような下世話な体験から、儒教倫理といった難解なものまで、さまざまだ。
しかも、韓国人男性と同衾したというただの笑い話のようなものでも、きちんと分析がなされていて読みがいがある。
例えばそのテーマの文章は、日本人より韓国人の方が体を接触させることが相互の親密さを表すと考えているという分析がなされ、日本人と韓国人の接触感覚についての比較考察などというところにまで話が及ぶ。
幅広い分野について見識ある分析を読むことができる本書は、著者の願い通り、読者が韓国を理解し、韓国ファンになり、韓国人との輪を広げていく一助となるだろう。
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言論改革
大手紙の「権力」俎上に激動の韓国社会解説も
森 千春 著
(中央公論新社720円+税)03(3563)1431
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先の韓国国会議員総選挙では、「国会での大統領弾劾決議の是非」が焦点となり、その他の問題はかすんでしまった。韓半島の平和体制構築と南北関係改善に不可欠な北韓核問題と今後の対北政策なども論じられることなく終わった。
「韓国の試練」をサブタイトルとする本書は、南北統一問題について韓国が抱えている問題を直視、その淵源を探ったもの。今日の南北関係に露呈している問題を理解するためには金大中(前)大統領の統一構想と対北政策の検証が欠かせないと、多くのページを割いているのが特徴。
「6・15南北共同宣言」(2000年)について「同宣言の弱点は、南北が守るべき具体的なルールではない点にあった」と主張。さらに「同宣言の持つ問題は、91年の南北基本合意書に全く言及していないところに端的に表れている」「南北基本合意書を土台とせずに作った南北共同宣言には、(緊張緩和と戦争防止など)安全保障の問題が欠落してしまった」との指摘も。
「南北基本合意書」および、同時期に南北間で署名・発表された「韓半島非核化共同宣言」をクローズアップしており有意義だ。著者の強調するように、「非核化共同宣言」が実行されていたならば、北韓の核疑惑が再燃する余地はなかっただろう。
「南北関係においては、『民族』を優先する価値観が支配的で、『ルール』が定着していない」との指摘もうなずける。韓半島の緊張緩和・平和確保と南北交流・協力拡大へ、「基本合意書」と「非核化共同宣言」に立ち戻ることが、今、求められているという。同感だ。
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にっぽん村のヨプチョン
「七転び八起き」の在日 一寸の虫にも五分の魂
朴重鎬 著
(御茶の水書房2800円+税)03(5684)0751
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ヨプチョンとは、同胞が自分たちのことを自嘲気味に語る時に使う言葉だ。なぜ、表題に使われているのだろうか。
在日同胞を追い込む日本社会の偏見と、倒されても何度も起きあがる「七転び八起き」の「在日」の生が、本書の骨格である。ヨプチョンには、「一寸の虫にも五分の魂」との思いが込められている気がする。
物語の前半は、北海道・室蘭の大地に、必死にへばりついて生きる在日1世、貞淑を主人公に進む。彼女は北海道で病に伏した義弟を迎えに行く夫に、強引について行く形で封建的な韓国の田舎を飛び出す。
右も左もわからない夫婦に対して、先に日本に来ていた同胞が世話を焼くが、やがて裏切られる。
もう一方の主人公は次男の昌浩。社会の底辺に居続けることを忌避して東京の大学に進学する。そこで出会う朝鮮総連傘下留学生同盟の同胞学生に影響され、組織活動家の道を踏み出す。祖国、北韓こそが希望だとばかりに青春をかけていく。
第一次「北送船」の前夜から新潟出航の様子が、目の前で展開されるような描写で迫ってくる。
また、東京オリンピックを前に、北韓から送られてきた代表の通訳として任務を受けた昌浩が、大会に出場できないかもしれない本国の事情の中で、緊張と葛藤を強いられる場面は、歴史の裏側を伝えている。
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箸とチョッカラク
韓日の文化的相違分析 相互尊重を呼びかける
任栄哲、井出里咲子 著
(大修館書店1800円+税)03(3295)6231
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韓国人の任栄哲氏の日本での体験と、日本人の井出里咲子氏の韓国での経験を織り交ぜつつ、主に韓・日の言葉の違いを題材に、両国の文化的相違について分析している。
といっても、堅苦しいものではなく、双方の国民がコミュニケーションを行う上で摩擦や誤解を引き起こす要因は何か、という言語外の要素に着目する立場をとっている。
表題にもなっている「箸とチョッカラク(『箸』の韓国語)」は本文の最終項に。「箸」と「チョッカラク」は形が似ている。そのため「チョッカラク」は箸と同じものとして使ってしまいがちだ。しかしそうすると、本当は使われる文化的、社会的背景に相違があり実際は似て非なるものなのに、同じものだと誤解して使うため、持った時の感触や舌触りなどに違和感を感じることになる。
この「箸とチョッカラク」の例は、そのまま「日本語と韓国語」にも当てはまる。つまりいくら類似語であっても、その言葉がどのような社会的、文化的背景を持って使われるのかを理解していなければ、その言葉は正しく伝わらない。
そして、誤解や摩擦が生まれるのが避けられないのなら、せめて韓・日の文化的相違を認識して、相手を自分の物差しで計るという過ちを犯さず、お互いを尊重すべきだろう、と呼びかけている。
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朝鮮半島は統一できるのか
韓国の抱える問題直視 「基本合意書」再生促す
孫錫春 著
(みずのわ出版4500円+税)078(242)1610
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韓国の国民世論をつくり出す巨大な力の一つが、言論機関であると言っても過言ではない。韓日関係のこれまでの懸案を、一般レベルの問題にしてきたのは、良くも悪くも言論がリードしてきたからである。
特に、新聞という活字ジャーナリズムは、日本の植民地支配下にあっても、東亜日報がベルリン五輪のマラソン金メダリスト、故孫基禎氏の「日章旗抹消事件」を引き起こしたように、時の権力と闘ってきた伝統がある。この場合は、いい意味で使われる。
ところが、本書では副題に「韓国・新聞権力の世論支配に挑む」と書かれ、発行部数の70%を占める大手新聞の権力との癒着構造などが俎上にあがっている。そればかりか、大統領府VS朝鮮日報という図式に対しても等距離の姿勢で向き合う。
東亜日報を辞職した著者が、ハンギョレ新聞に連載しているコラムを中心に、18編が収められているが、近年の韓国の政治をはじめとしたいろんな分野での激動ぶりが、丁寧な解説つきで示してあるので、読者には読みやすい。
しかし、「ばか盧武鉉」というタイトルに代表されるような歯に衣を着せぬ物言いをして大丈夫か、とかつての維新体制時代の韓国を知る人は危ぶむだろう。それも杞憂に過ぎない。もはや民主化された韓国では、大統領批判もさして問題にならなくなった。それも言論機関がつくり出した「功績」である。
訳者の川瀬俊治さんは、故梁泰昊さんと『知っていますか?在日韓国・朝鮮人問題一問一答(第二版)』を出版するなど、在日同胞の問題にも詳しい。
(2004.4.28 民団新聞)