掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 3441
<読書>日本と韓国の歴史共通教材をつくる視点 過去にきちんと向き合う
韓日間で常に紛糾の種になるものの一つが歴史教科書問題である。
「新しい歴史教科書をつくる会」をはじめとした国家主義的色彩を前面に出したグループが、植民地支配などの不幸な歴史を歪曲し、政治問題化したのは記憶に新しい。昨今の両国関係がギクシャクしている要因になっている。
本書は両国の高校生を読者対象に、韓国の歴史教科書研究会と日本の歴史教育研究会が行ってきた「教科書シンポジウム」の成果をまとめたものである。ソウル市立大学と東京学芸大学の共同研究グループが共通の教科書づくりにあたった。
在日韓国人の関連記述では、解放前の強制連行や皇民化政策、神社参拝、創氏改名などを、解放後は韓日条約や北送事業、共生社会などを取り上げている。記述の理解を助けるために、コラムも掲載した。
過去の事実に対して、臭い物に蓋をするような修正主義、あるいはご都合主義の結末は、日本軍が集団自決を強制したとの表記を削除・修正したことによって沖縄県民の怒りを買い、大規模な教科書抗議集会と検定撤回要求、さらにその後の日本政府の泥縄式の対応が示しているように、滑稽そのものである。過去にきちんと向き合わないまま、未来志向を語るのは、語るに落ちるの図である。
(歴史教育研究会編、梨の木舎3000円+税)
℡03(3291)8229
(2007.11.7 民団新聞)