掲載日 : [2007-11-08] 照会数 : 4241
<読書>江田船山古墳鉄剣銘の秘密 古代史「定説」に一石投ず
古代史から見た韓日関係の深さと固定観念から脱却して事実を探求する必要性を訴えた一冊。副題に「被葬者は百済王の王子だった!!」とあるように、現在、熊本県玉名郡菊水町に点在する数基の古墳のうち、最大の前方後円墳である江田船山古墳について、これまでの定説を検証し、新たな立証を試みたものである。
日本の考古学界では、江田船山古墳に葬られているのは雄略天皇とされてきた。それに対して、著者は古墳の造営が460年から470年代と認定・定説化されているのは、韓国の考古学界の学説や文献などとも一致するので異論はないが、この古墳から出土した遺品のうち、大刀の「銀象嵌銘文」を日本の仮名文字で解釈するのは無理があると疑義をはさむ。
万葉仮名ややまと言葉が成立したのは、7世紀後半か8世紀初頭であるからだ。つまりこの古墳ができた4世紀後半頃には、日本は文字がなかったということである。
大刀が発掘されて130年余り、日本の学者の説が定着してから70余年が経過したが、いまだその「定説」に疑問をはさむ者はいなかったという。件の学者は類似した遺品が韓国慶尚南道昌寧郡柴戸里から出土したことは認めても、韓日でなぜ同じ遺品が出土されたかについては研究しなかった。その姿勢にも異議を唱える。
(江口素里奈著、五月書房3000円+税)
℡03(3233)4161
(2007.11.7 民団新聞)