掲載日 : [2007-09-12] 照会数 : 4189
<読書>青き闘球部 楕円ボールにかける青春
副題は東京朝鮮高校ラグビー部の目指すノーサイド。高校ラガーマンの聖地、花園への切符を勝ち取ろうと、日々楕円形ボールを追いかける教師と生徒らを描いている。著者は現在、関東ラグビーフットボール協会公認レフュリーで、行間には後輩たちへの愛情がにじむ。
75年創設の同校ラグビー部は、ボクシングと並び問題児の受け皿でしかなかった。ルールさえ守れば思い切り喧嘩ができるとばかり、ストレスのはけ口だったラグビー部に新風を吹き込んだのは、日本人教師だった。ラグビーの経験がある教師は、生徒らのあまりの体たらくにじりじりし、自ら指導を買って出た。生徒らには、迷惑な話だったが、的確な指導に次第に心を開いていく。
ところが、試合相手はいなかった。日本の公式戦への参加を認めない「国籍条項」に加え、日本の高校や大学と暴力事件を繰り返すイメージの悪さが世間に広まっていたからである。年1回開かれる「在日本朝鮮人中央体育大会」で他地域の同胞高校生との対戦が関の山だった。
その後、94年に「国籍条項」が撤廃され、花園常連組の高校とも対外試合ができるようになった。OBによる支援会も発足した。いまだ花園への道は険しいが、目標ができた生徒らは、確かな手ごたえを感じている。
(李淳 著、ポット出版1900円+税)
℡03(3478)1774
(2007.9.12 民団新聞)