掲載日 : [2007-09-05] 照会数 : 3379
<読書>朝鮮半島「核」外交 核が握る体制の維持と崩壊
7年ぶり2回目の南北首脳会談まで1カ月を切った。焦眉の課題は核問題の解決へ前進するかどうかである。
本書は79年から85年までソウル特派員を経験し、現在はコリアンウォッチャーとして活躍する著者が、北韓の選択肢は核放棄か政権及び国の崩壊しかないと結論づける。
昨年10月の核実験は、体制維持に汲々としている北韓が、金融制裁などの包囲網で「崩壊への恐怖」に陥り、指導部が判断を誤って引き起こされたという。北のこれまでの戦略は、核開発を脅しの外交カードにすることで、米国や日本からの譲歩を引き出すことにあった。いわゆる瀬戸際外交である。
核保有を米国の脅威に対する自衛措置と強弁する北(韓国にも同調する意見がある)は、核保有を認めさせるために核実験を強行するしかなかった。ところが、実際に核実験に踏み切った結果、もたらされたのは国連をはじめとした制裁措置であった。あわてた北は6者協議への無条件復帰に合意した。
外交文書としては具体性に欠けた「平壤宣言」など、北の暴走を許してきた6者協議の当事国の対北政策をも辛口に批評しているほか、中国やロシアがすでに北韓の同盟国でなく、自らの国際的な立場を有利に展開するための存在としか北を見ていないとの指摘も興味深い。
(重村智計著、講談社現代新書740円+税)
℡03(5395)3521
(2007.9.5 民団新聞)