掲載日 : [2007-09-05] 照会数 : 3273
<読書>遺骨の戦後−強制動員と日本 日本は遺骨問題の解決急げ
韓日両政府の合意のもと、日本国内に残存している韓半島出身の強制徴用者などの遺骨の調査が始まってからまる2年が過ぎた。市民団体と仏教界の調査の進展もあり、推定ながらすでに2000体以上の遺骨情報が厚生労働省に寄せられているといわれる。
しかし、韓国国内では死亡情報すら受け取れず、生死確認を求めている人たちは6000人近くいる。日本政府の調査はまだまだ不十分といえよう。民団が組織を挙げて奉還した遺骨は2200余体を数えるのだ。非公式ながら韓国政府筋からは、あと1年近くで集約されるであろう遺骨数が、5000体を下回ることは容認できないといういらだちの声すら聞こえてくる。
そもそも、解放から60年余りが経過したいま、なぜ遺骨問題なのか。日本政府の側に清算されないできた戦後処理責任という基本的な認識が欠けているように思われる。遺骨を返せばそれで終わりではないのだ。遺骨は生命と人格の象徴だ。日本政府は、韓国政府から積年の宿題を処理するよう求められているという現実を直視してほしい。
本書では遺骨問題に取り組む市民団体が、韓国の遺族の声、韓日関係、日本人の場合の遺骨問題などをからめながら「遺骨の声なき声に耳を澄ます」よう訴えている。もの言わぬ遺骨を通して日本の戦後のありようが見えてくる。
(内海愛子、上杉聡、福留範昭編著、岩波ブックレット480円+税)
℡03(5210)4148
(2007.9.5 民団新聞)