<寄稿>岡山尚幹日本オーケストラ連盟顧問
話題の独奏者も…期待のアジアオーケストラウィーク
今年6年目を迎える日本政府文化庁が主催する「アジアオーケストラウィーク2007」(10月2日から開催)には、韓国を代表するKBS交響楽団が来日することとなった。
このオーケストラの祭典には、アジア・太平洋地域の国々のオーケストラが招かれているが、中でも多くの活発なオーケストラを抱える韓国と中国からは、初年度から毎年すぐれたオーケストラが来日している。
レベルの高さ日本でも浸透
韓国は2002年のプチョン・フィルハーモニック管弦楽団を皮切りに、03年スウォン・フィルハーモニック管弦楽団、04年ソウル・フィルハーモニック管弦楽団、05年にテジョン・フィルハーモニック管弦楽団、06年には韓国交響楽団、そして今年は名門、KBS交響楽団である。
韓国クラシック音楽界のレベルの高さは、指揮者チョン・ミョンフン氏などの国際的な演奏家たちの活躍により日本のクラシック音楽愛好家に知れわたってきた。そして、毎年このフェスティバルで披露される韓国各地のオーケストラの演奏レベルの高さに、日本の聴衆はさらに韓国に対する認識を新たにしているのだ。
個々のオーケストラプレイヤーの充分な演奏技術に支えられた豊かな表現力は日本の聴衆を喜ばせ、それにもまして、毎年オーケストラとともに来日するピアノやバイオリンの若い独奏者たちが魅力的で、それを楽しみに来場するファンも出てくるようになってきた。
今年も、昨年英国で行われたリーズ国際ピアノコンクールにアジア人で初、また最年少で優勝し話題になった19歳のキム・ソヌクさんの来日には期待が高まっている。
このフェスティバルの魅力は、何といってもそれぞれのオーケストラの発散する民族性であろう。今年はKBS交響楽団のほかに、中国雲南省から昆明交響楽団、そしてインドのデリー交響楽団とスリランカ・コロンボを本拠とするスリランカ交響楽団の合同オーケストラが来日する。
同じベートーベンやチャイコフスキーの作品を演奏しても、オーケストラが異なれば、プレイヤーの民族の特性がそこに滲みでて異なった表現となり、聴衆はその違いを楽しむことができるのだ。その証拠に、このフェスティバルを連日聴く通し入場券(セット券)を購入する聴衆が年々増えている。
また、どのオーケストラも1曲は自分の国の作品を演奏することにしているが、そこにこそ民族性溢れる音楽が披露される。今年、KBS交響楽団は管弦楽版「アリラン」を、中国・昆明交響楽団は「ヤオ族舞曲」を、インド=スリランカ交響楽団は「ピアノと民族太鼓のための協奏曲」を演奏することになっている。ぜひ楽しみにしていただきたい。
オーケストラのコンサートは、とかく堅苦しくて楽しめないといわれる。これは、しばらく以前に日本にあった「教養としての西洋音楽」という考えが残っているからではないだろうか。どうかそのような考えは捨てて、「人生を豊かにするための楽しみの一つ」と考え、来日するアジアのオーケストラの演奏に声援を送り、そして楽しんでいただきたい。
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見どころ ダイナミズムな演奏
創設半世紀を迎え名実ともに韓国を代表するオーケストラは、当フェスティバルへの登場が待たれていた。
指揮のチャン・ユンスンは97年の東京国際音楽コンクール指揮部門で2位(1位なし)入賞と齋藤秀雄賞を受賞。10年後の今年、自国オーケストラを率いて晴れの来日となった。
注目されるのがピアニストのキム・ソヌク。内田光子やアンドラーシュ・シフ、ラドゥ・ルプーなどが通ってきたコンクールの名門、英国リーズ国際コンクール昨年の優勝者だ。近年、韓国の若手演奏家の国際舞台での活躍は目覚しいが、留学をせず「純粋な韓国派」として実力をつけたというピアニストの初来日には一層期待がかかる。
プログラムはオーケストラで幻想曲風に歌われる民謡「アリラン」にキムの期待のショパン。そして、映画音楽も手がけたショスタコーヴィチの標題音楽の傑作、〞巨大な交響詩〟といわれる「1905年」。ダイナミズムにあふれたこの作品を、韓国のオーケストラがどう演奏するのか楽しみだ。
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公演の日程
〔主催〕文化庁芸術祭執行委員会
▽KBS交響楽団/東京10月2日、大阪10月3日▽昆明交響楽団/東京10月3日▽インド=スリランカ交響楽団/東京10月4日。
〔会場〕東京オペラシティコンサートホール、大阪ザ・シンフォニーホール。
各19時開演。S席3000円、A席2000円、B席1000円(全指定・税込)。東京3公演セット券S席7000円、A席5000円。有名プレイガイドで発売中。
前売・問い合わせは日本オーケストラ連盟(℡03・5610・7275)。
http://www.orchestra.or.jp/
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岡山 尚幹(おかやまなおもと)
社団法人日本オーケストラ連盟顧問。東京生まれ。早稲田大学大学院修了。文化放送をへてフジテレビ勤務、長年にわたり音楽番組の制作に携わる。ニュ‐ヨーク、パリ両支局勤務の後、産経リビング新聞顧問。94年(社)日本オーケストラ連盟常務理事に就任。72年より現職。
(2007.8.29 民団新聞)