掲載日 : [2008-07-30] 照会数 : 4087
<読書>38度線・非武装地帯をあるく 非戦の願いを込めたルポ
今も「冷戦」の現場になっている韓半島を分断する38度線。非武装地帯にある板門店のほか、臨津江、金剛山など8つの地点を、朝日新聞ソウル支局の記者時代と、退社した後に再び訪ね、南北韓の緊迫した雰囲気とその対極にある雪解けの兆しをルポした。
韓国戦争の休戦協定が調印された板門店は、冷戦時代は南北双方が非難の応酬を繰り返し、時には撃ち合いもあった。今は観光地化が進み、年間の見学客は約11万人。「世界に開かれたスポットになることで、平和のシンボルになれば…」。著者の非戦の願いが凝縮された場でもある。
次に、映画「パッチギ」の挿入歌で再び脚光を浴びた「イムジン河(臨津江)」の展望台から北韓を望むと、対南非難放送の基地だった「宣伝村」には、今では約3000人が住む。韓国戦争最大の激戦地で、南北双方で多くの尊い人命が失われた鉄原一帯は、ワシや鶴など、希少種の渡り鳥が舞う。生態系が維持された野生の宝庫を、ユネスコの世界自然遺産に登録しようとする動きもある。
日本の軍艦雲揚号が侵入して激戦となり、不平等条約を結ばされ、後の韓日併合に端緒を開いた江華島や、金日成暗殺部隊の訓練の場になり、映画のヒットで初めて陽の目を見た実尾島も訪ねた。歴史の風化を許さないという姿勢が行間から伝わってくる。
(小田川興著、高文研1600円+税)
℡03(3295)3415
(2008.7.30 民団新聞)