掲載日 : [2008-11-06] 照会数 : 3688
<読書>人間の砦 棚上げにされた加害の罪
副題に「元朝鮮女子勤労挺身隊・ある遺族との交流」とある。太平洋戦争が激化する中、日本政府の国策のもと、朝鮮の少女らは「日本で働けば寮に入って給料をもらいながら、女学校で勉強ができる」との甘言に騙され、過酷な条件下で軍用機生産に従事させられた。
敗戦とともに放り出された少女らは、88年に日本国と三菱重工を提訴したが、名古屋高裁判決は「それは強制連行…、強制労働である」と認定したものの、訴えは却下した。いまだに政府・企業の謝罪も補償もなされていないのが現状だ。
本書はすでに年老いた女性らの過酷な過去と現実を綴りながら、日本人の良心にかけて、この非道をいつまで許すのかという重いテーマを司法関係者、政府、企業人らに投げかけている。
著者はバブル全盛時代に企業戦士として働いたごく一般の日本人だった。好景気に便乗して遊びに出かけた済州島で、いくつもの偶然が重なって出会った初老の男によって人生が大きく変わることなど想定外だった。その男は、戦争末期の44年12月、戦意喪失を招くとして一般には秘密にされた東南海地震で犠牲になった挺身隊少女の長兄で、奥さんは亡き妹の同級生だった。日本の正義と不条理を問う長い闘いは、今も続いている。
(山川修平著、三一書房2000円+税)
℡03(5433)4231
(2008.11.5 民団新聞)