掲載日 : [2010-01-01] 照会数 : 9701
平和で実り豊か!?庚寅 不気味な歴史も
展望明るい韓国トラにあやかろう
今年の干支は庚寅(かのえ・とら)。干支とは、中国の殷の時代(紀元前1500年頃)に確立されたとされる陰陽五行説を表す十干と、月や時刻を数える暦法の十二支が合体したものだ。
十二支はもともと十二進法の数字である。子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥の十二文字に動物の意味はなかった。前漢(紀元前3世紀頃)時代、動物の名前と結びついて十二支獣となった。寅の文字には虎があてられた。
庚と虎それぞれの漢字のもともとの意味を見てみよう。そこから、今年一年の行方を考える糸口にしたい。
庚の字は、漢字の原形とされる甲骨文字では、両手で杵を持ち、穀物を脱穀して臼をつく形とされている。1年の中では秋、方角では西方を表し、豊かな実りを象徴する。
寅は、甲骨文字では同様に両手で、今度は矢を持つ姿からきているとされる。戦闘的な意味を持つ字で、虎があてられているのもふさわしい。
この両字の合体が意味するものは、両手で穀物を持ちながら、同時に矢を持つという矛盾した状態だ。豊かな実りのためには平和という安定が必要であり、原則として戦いはさまたげになる。果たして世界はこの両者のどちらに傾くのか、不安定な均衡が続く戦慄すべき1年かもしれない。
60年前の庚寅の年、1950年には6・25韓国戦争がぼっ発した。この戦争は韓半島に住む人々に塗炭の苦しみを与えたが、皮肉にも日本ではその後の経済成長のきっかけとなっている。
その前の庚寅の年、1890(明治23)年、日本では米騒動が広まり、夏の甲子園大会が中止になったほか、渡良瀬川の足尾鉱毒が問題化するなど激動が続いた。韓半島でも、1894年の甲午農民戦争や日清戦争へと向かう激動の只中で、ソウルで民衆による反清・反日の抗議が続いた。
寅年だけで見ると、前回の1998年、日本では昨年政権についた現・民主党の母体が発足し、韓国では金大中氏が大統領に就任した。和歌山カレー毒物混入事件ものこの年だった。
虎といえば阪神タイガースだが、1935(昭和10)年の球団創立以来、寅年に優勝したのは2回だけ。1936年のプロ野球リーグ発足以降、1937年の寅年の秋季リーグに当時の大阪タイガースが優勝し、戦後は1962年の寅年に優勝しているが、その後、寅年の優勝はない。
タイガーといえばあのタイガー・ウッズ選手のプレー姿は、今年は見られるのか。タイガーなき寅年なのか。不気味な気配がただよう、庚虎の新年ではある。
しかし、「白頭山虎」「アムール虎」「シベリア虎」などと呼ばれる韓国のトラは元気だ。
昨年6月、ドイツのライプチヒ動物園が管理する国際トラ血統登録に韓国のトラ52頭が登録された。南北のつがいから生まれたばかりの「統一ホドリ」3頭も含まれている。登録されると各個体に固有番号が与えられ、国際間での交流が可能になる。近親交配による遺伝的劣化を回避できる。
韓国政府は昨年、ロシア政府に対し数回、シベリア虎のオス2頭、メス1頭の寄贈を正式要請した。プーチン首相は「数種のトラを寄贈することは義務だ」と述べ、好意的な対応を示している。
トラを88年ソウルオリンピックのマスコットにしたほどの韓国。展望の明るい韓国トラの将来にあやかって、世界同時不況をいち早く抜け出した勢いに、さらに弾みをつけて欲しいものだ。
(2010.1.1 民団新聞)