15年ぶりに、秋深まる広島を訪れた。1999年に平和記念公園内に移設された「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」をもう一度見たかったからだ。
市電を降りて公園に向かうと、まず、原爆ドームが目に入る。おのずと粛然たる気持ちになり、手を合わせる。橋を渡り公園内に入ると、左手に「平和の灯」と慰霊碑、その向こうに平和記念資料館が一直線に並ぶのが見えた。参拝者が列をなしている。
右手の「原爆の子の像」などを過ぎて右折すると、左前方に「被爆した墓石」に隣接して韓国人慰霊碑が設けられていた。
亀を形どった台座の上に碑柱がたち、その上には双竜を刻んだ冠が載せられている。韓国で製作され、運ばれて来たものだ。高さ5㍍の珍しい形状は公園内でも際立つ。
かたわらでしばし見入っていると、修学旅行生たちが入れ替わり合掌していく。車いすの生徒もいる。ある学校では、担当と思われる生徒2人が韓国人慰霊碑について説明した。
「日韓併合により朝鮮を植民地としたため、強制連行や徴用によって多くの朝鮮人が働かされた。原爆投下で2万を超える朝鮮人が被爆された」云々。引率者が、碑石は在日韓国人によって建てられたものだと補足していたのが印象深かった。
こういう修学旅行ならば、学校での歴史教育よりはるかに効果的だ。在日韓国人の存在を初めて知った生徒も少なくないだろう。公園内に移設されたことの意義は計り知れない。
最近、韓日間で政治家による軋轢(あつれき)が生じていたため、もやもやした気分にさせられていたが、この修学旅行生たちの姿を見るや、それがスーッと晴れた。(Q)
(2012.12.1 民団新聞)