諌めるすべもなく
軍将星の不安・不満募る
金日成、金正日に続く世襲3代目の金正恩は、時を追って異常な統治スタイルを露わにしてきた。最も衝撃的だったのは昨年12月、金日成の婿であり、伯母・金敬姫の夫である張成沢(前・党行政部長)を機関銃で処刑したことである。
処刑直前には、張成沢の最側近幹部であった党行政部の李龍河第一部部長と張秀吉副部長らを党幹部たちの前で公開銃殺した。金正恩は2009年にも、自らの野心のために準備した貨幣改革が失敗すると、その責任を朴南基・党財政計画部長になすりつけ、公開銃殺したことがある。
気分赴くまま
北韓労働党の結党以後、金日成、金正日が執権する間、数多くの党・政・軍の幹部が粛清されてきた。だが、党の最高位級幹部たちが公開的に銃殺されたことはない。金ファミリーのなかで唯一の長老格だった張成沢を甥である金正恩が処刑するなどとは、金敬姫はもちろん北韓の誰もが想像できなかったという。金正恩の血も涙もない残忍性が際立った。
金正恩の奇行はこれにとどまらない。彼は12年4月に公式な指導者になってから現在までの2年間、北韓軍の核心的な補職である軍総政治局長を2回、総参謀長を3回、人民武力部長を3回、作戦局長を3回交代させた。これに加え、軍将星たちの階級を気分によって上げたり下げたりを繰り返している。
軍服務の経験がない崔龍海を大将にさせたかと思えばすぐ次帥に昇進させ、再び大将に降格させておいてまたも次帥に昇格させた。現在は軍服を着せていない。彼の後任として総政治局長になった黄炳瑞は今年2月、中将から上将に、4月には大将に、それからわずか10日後には次帥に昇進させた。2カ月間で階級が3段階も上がったことになる。
金英哲・偵察総局長も大将から中将に降格、再び大将に返り咲いた。張正男・人民武力部長も2年にならない期間に中将から上将、大将へと昇進しながら、再び上将への格下げを経て現在は大将になっている。
このように、軍部の人事がジェットコースター状態にある。北韓軍将星たちは今、星が、ある朝いきなり増えたかと思えば翌日にははがされる奇異な状態に不満を募らせ、その勢いは天を衝くものがあるという。
金正恩は誇大妄想癖でも度を超している。昨年の核実験強行後、ワシントンを核砂漠にすると脅かしたかと思えば、米国本土やグアムなどを攻撃する軍事作戦地図が掛かった執務室に夜中、軍高位幹部たちを呼び集め、いわゆる「米国打撃命令」を下したのだ。しかも、この会議の様子を新聞に公開している。
西海の白 島に近い島の軍基地で、白 島の韓国軍基地を攻撃するとき、「まずはレーダーを、次はハプーンミサイルを、その次には砲陣地を叩かねばならない」などと順序を決めてやり、この場面もテレビに公開した。数十年間も韓国軍への攻撃訓練をしてきた北韓第4軍団の将星たちの前でこのような指示をしたこと自体コメディ以外の何ものでもない。
さる5月10日、金正恩の温泉飛行場での現地指導は、それこそ圧巻だった。この飛行場は平壌から西に50㌔に満たない距離に位置している。車なら40分もあれば十分だ。ところが彼は、平壌から北に30㌔離れた順安飛行場に車で行き、ロシア製の古いイリューシン62Mの専用機に乗って温泉に向かい、わずか10分で到着した。
彼はさらに、飛行機から儀仗隊の前までレッドカーペットを敷かせ、その上を歩いた。これは、一国の元首が外国に国賓として赴き、その国の首班から出迎えを受け、国歌が演奏されるなか軍儀仗隊を査閲する姿そのものだった。
崩壊の前奏曲
車で行けば40分しかかからないのに、なぜ、わざわざ時間をかけ、飛行機を使ったのか。警護の負担や費用もかさむ。執権して2年半になろうとしているのに、唯の一度も外国訪問をしていない金正恩は、他国の元首らが外国で受ける歓待を国内でいいから味わって見たかったのであろう。自分は少なくとも、このような迎接を受けるべき堂々たる国家指導者であるとして、権威を内外にアピールしたかったのかも知れない。
党と軍の人事を無原則に行い、張成沢・党行政部長、朴南基・党財政計画部長など高位幹部たちを残忍に銃殺する国、30歳の未熟な指導者が気分に任せて好き勝手をやってもこれを諫める幹部も法的装置もない国、これがまさに北韓だ。
非常識で無能なリーダーである金正恩が統治する国が果たして、どこまで持ちこたえるのか。歴史の経験に照らせば、「崩壊の前奏曲」が奏でられていると言うほかない。
(2014.6.25 民団新聞)