掲載日 : [2008-05-28] 照会数 : 4734
大韓民国60年の歴史を再評価へ…李明博大統領
否定史観をただす
産業化と民主化に再照明
60周年事業委など通じ作業
李明博政府は、建国60周年に当たる今年、建国後の韓国現代史に対する本格的な再評価作業に着手する。
青瓦台によると、金大中・盧武鉉両政府の10年間で形成された1945年の「光復」以後の現代史に対する否定的評価をただし、中道的立場で産業化と民主化の過程を肯定的に再評価する。再評価作業は、官民共同の建国60周年記念事業委員会(共同委員長=韓昇洙国務総理、玄勝鍾高麗中央学園理事長、金南祚淑明女子大名誉教授)と大統領直属諮問機関の未来企画委員会(委員長=安秉萬元韓国外大総長)を通じて行われる。
李明博大統領は、22日の記念事業委初会議で「過去60年の歴史には、所々恥ずべき部分もあったが、全体的には誇らしい歴史だった。60年をしっかり振り返り、新しい60年は皆ともに歩むことができるようにしてほしい」と要望。「韓国の歴史に対する誇りが若い世代にもうまく伝えられるよう、持続的な事業を構築したい」と明らかにした。
李大統領は未来企画委の初会議(14日)では、「今日の韓国社会は、過去にばかりとらわれて多くのものを失い、未来が犠牲になっている」と強調。「過去を乗り越え、今日を乗り越えて初めて未来が切り開かれる。過去は尊重するが、これにとらわれることなく、国民に希望を与えて新天地を創造する『大韓民国の未来づくり』に力を投入しなければならない」と表明している。
両委員会の発足に先立ち、青瓦台高位関係者は12日、「盧武鉉政府は韓国の過去60年を失敗と汚辱の歴史と規定し、意図的に過去に対する否定と断絶、過去史による選り分けを通じて政治的立場を確保しようとした側面がある」と断じ、「現政府は過去60年を、産業化と民主化の両面でめざましい成果をあげた肯定の歴史として、再照明する」と力説していた。
偏向的記述の教科書も修正
これと関連して教育科学技術部は15日、偏向的記述が多いとされている小・中・高校の韓国近・現代史および社会の教科書の修正に着手。国史教科書編集機関でもある国史編さん委員会も、4月に修正した「歴史教科書執筆基準」をもとに、今後、教科書の執筆と検定過程で「韓国の正統性」を強調する方向で教科書の改・修正作業を推進する。
現在、韓国近・現代史の分野においては6種類の検定済み高校教科書があるが、一部の教科書は、「大韓民国は生まれるべきではなかった国」とし、6・25韓国戦争(50年6月〜53年7月)についても「北韓の侵略」ではなく「南北の軍事衝突」だと定義するなど、親北韓・左派的視点から記述されている。
たとえば、最も多く使用されている金星出版社版『韓国近・現代史』は「民衆・民族主義を根幹とする最も左派寄りの視角の教科書」とされている。韓国については「建国」が南北分断をもたらしたと厳しく、しかも「外勢依存的」だと否定的に記述。
その一方で、「6・25」を引き起こし同胞300万の犠牲者と南北1千万離散家族を生み出したばかりか、その後も核開発のために数百万同胞を餓死させた北韓の体制と歩みについては「民族自主的」で、民衆の支持により前進してきたと肯定的に評価し、事実上、金日成・金正日王朝体制を擁護している。
こうした教科書が、学生たちの歴史認識に大きな影響を及ぼしてきた。
盧武鉉政府時代に陸軍士官学校の校長を務めた金忠培国防研究院院長が、4月に「朝鮮日報」とのインタビューで明らかにした「04年1月陸士仮入校生(250人)意識調査結果」によると、「韓国の主敵(仮想敵)は誰か」との設問に34%が米国を挙げ、北韓とする回答は33%にすぎなかった。
また当時、国防部が行った新入隊将兵への意識調査でも75%が反米感情を示した。金院長は、彼らの安保意識を正すために、専門家を動員して「事実で見る韓国近・現代史」という士官学校用の教材を作成。「6・25」はソ連(スターリン)の同意と積極支援を受けた北韓(金日成)の南侵であることを明示し、米国の参戦がなければ今日、韓国という国家が存続していたかどうかわからないことを伝えた。同時に、戦後、世界でも類を見ない短期間での産業化と民主化を成し遂げた韓国の歩みの意義を強調した。その結果、生徒たちは、米国を主敵と考えなくなったという。
葛藤を解消し国民の統合を
韓国は、6・25同族相残戦争など未曾有の苦難を背負った分断国家でありながら、多くの難関を乗り越え、世界10位圏に迫る経済力と民主主義体制を確立した。
だが、この間、韓国・政府を「米国の植民地」「かいらい政権」と規定する北韓に対する政策と南北両政府の正統性をめぐる保守・進歩、あるいは左右対立による国論分裂が甚だしく、南北統一をも視野に入れた先進一流国家実現への国力増進を自ら阻んできた。
李大統領は、未来企画委と建国60周年記念事業委による歴史への再照明を土台として、今年8月15日に「過去の60年とこれからの60年に対する評価とビジョン」を明らかにする予定だという。
韓国は、この60年、戦争・テロを強行した北韓の軍事的脅威のもとに膨大な国防費負担を強いられながらも、産業化・民主化を実現、民族の国家としてその正統性をより確かなものにしてきた。そのことを確認するとともに、北韓の60年の歩みと悲惨な現状をも踏まえ、自由で民主的な、望ましき南北統一国家実現への明確なビジョンを持って、自国の歴史認識をめぐる葛藤を発展的に解消し、国民的な統合を果たす機会とすることが強く望まれている。
(2008.5.28 民団新聞)