掲載日 : [2020-06-10] 照会数 : 7171
隣国理解へ実証研究…「むくげ通信」300号
[ 「むくげの会」代表の飛田雄一さんと合本 ]
日本人市民 考古学、社会学、歌謡曲まで
【兵庫】韓国・朝鮮の歴史、文化、風俗、言葉を勉強する日本人を中心としたサークル「むくげの会」(飛田雄一代表、神戸市灘区・神戸学生青年センター内)の隔月刊機関誌「むくげ通信」が300号(5月31日発行)に達した。300号記念パーティーは「むくげの会」創立50周年と併せ、来年1月に開催する。
当初は「会の連絡メモ」のようなものだったが、その後は隔月刊として充実した内容になっていった。毎月2回開く例会での発表内容を中心に約10本収録している。テーマは考古学から家族制度などの社会学、労働、農民運動史、歌謡曲など韓半島の文化に関するほぼすべてにおよぶ。
このなかに専門家は一人もいない。みな職場での仕事を抱えながら、自由な市民の立場で実証研究を行っている。その水準の高さは『GHQ文書研究ガイド‐在日朝鮮人教育問題』(金英達著、89年)など6冊の「むくげ叢書」をみれば明らかだ。
創立は1971年1月。「ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)神戸」の中に生まれた「差別抑圧研究会」に参加していた学生15人がアジアに目を向け、「日本人である自分とのぬきさしならない問題として」「身近な国、韓国・朝鮮をもっと知ろう」と呼びかけた。当時は韓国に対して偏見が強く、日本人の関心がほとんどなかった時代。日本人が中心となって学習サークルを運営すること自体が珍しかった。
創立メンバーの一人でもある飛田代表は「同僚と会を始めた時は20代前半だった。隣国の理解は友好のためだけでなく、現在の日本人自身を見つめなすことにつがると思った」と振り返った。
例会の会場は当初、神戸市のはずれにある安アパ‐トの4畳半だった。まずはハングルを学び、やがて韓国・朝鮮の文化、歴史、風俗を研究していくようになった。一定の理解が深まると、指紋押捺に反対する在日韓国・朝鮮人とも交流し、支援運動に加わった。学習や研究のほか、神戸学生青年センターで開いている「朝鮮史セミナー」や朝鮮語の運営にも協力している。
「むくげ通信」74~97年までの合本は全24冊で頒価2万円。同センター(078・851・2760)。
(2020.06.10 民団新聞)