掲載日 : [2023-02-15] 照会数 : 2311
70年ぶり「幻の詩集」復刊記念 ハンセン病 資料館展
〝癩〟乗り越え未来へ
『いのちの芽』の詩人たち
「らい予防法闘争」(1953年)という当局との「ガチンコ対決」のさなかで刊行された日本ライ・ニューエイジ詩集『いのちの芽』(大江満雄編、53年4月初版、三一書房)が東京都東村山市の国立ハンセン病資料館によって70年ぶりに復刊した。これを記念しての企画展「ハンセン病文学の新生面『いのちの芽』の詩人たち」が4日から同館で始まった。
『いのちの芽』は全国8つのハンセン病療養所から園を超えて20~30代を中心とする73人が参加した初の合同詩集だった。これまで一度も再刊されたことはなく、知る人ぞ知る「幻の詩集」となっていた。
初版発刊当時、初の化学療法治療薬であるプロミンが登場していた。入所者のなかには自らの境遇を「宿命」とするのではなく、変革可能な未来ととらえようとする意識の変化が生まれていた。
各作品からは戦前からのお仕着せ文学を乗り超え、新しい文学を創造していこうという「外部に向けての希望」も見出すことができる。
企画展は①刊行まで②同詩集の中核ともいうべき自筆原稿25編の紹介③その後の展開④編者の紹介という4部。ハンセン病問題を深く理解するのに役立つ構成となっている。
編さん委員の
李衛さん顕彰
自筆原稿の中には少年のころハンセン病を体験し、生涯にわたって非科学的な「らい予防法」に苦しんだ故・国本衛(本名・李衛)さんの「妹の手紙を見て」(年月不明)があった。手紙からは悲痛ともいうべき望郷の思いが伝わってきた。国本さんは『いのちの芽』編さん委員の一人を務め、後に東京地裁に出された国家賠償請求訴訟の原告も担った。
5月7日まで(月曜日および「国民の祝日」の翌日は休館、月曜日が祝日の時は開館)。9時30~16時30分、無料。
特別授業は児童に忘れられない思い出となって刻まれたようだ。児童が書いた感想文からは善隣友好への切なる願いが伝わってきた。(原文のまま)
(2023.2.15民団新聞)