掲載日 : [2023-03-01] 照会数 : 2543
「地底の闇、地上の光~炭鉱、朝鮮人、ハンセン病」趙根在さん写真展
[ 「舌読」=国立ハンセン病資料館提供 ]
4月9日まで丸木美術館
【埼玉】ハンセン病への偏見と差別がまだ根強かった時代に全国各地の療養所に足を運び、入所者の信頼を得ながら約2万点におよぶ写真を遺した在日同胞2世、趙根在さんを紹介する企画展「地底の闇、地上の光~炭鉱、朝鮮人、ハンセン病」が東松山市の原爆の図丸木美術館で開催されている。
展示写真は未公開写真を含め約180点。趙さんは1961年から約20年間、多磨全生園(東京)、菊池恵楓園(熊本)、栗生楽泉園(郡馬)など9カ所の療養所を訪ね日常の暮らしや「患者作業」と呼ばれた労働を撮り続けた。被写体からはカメラを向ける趙さんへの共感が伝わってくる。
ハンセン病療養所の写真が世に出ることはこれまでにもあったが、当事者はそっぽを向いたり遠景に退いたりして、堂々と正面を見据えて写真に収まることはなかった。
なぜ、趙さんには可能だったのか。療養所で共に寝起きしたことで信頼を得たこともあるだろう。だが、趙さんも被差別社会で生きてきた在日だったことが琴線に触れたのかもしれない。
趙さんは戦時中の家庭用燃料、亜炭の全国最大の採掘地だった愛知県知多郡生れ。父親の死去に伴い、中学3年生の時に坑内労働に従事。後にハンセン病療養所を訪ね、「太陽こそ頭上に輝いているけれど、人々は有形無形の壁に囲まれ、地底同様の闇にいるのだ」と実感したと話している。
企画展を担当した丸木美術館専務理事の岡村幸宣さんは「ハンセン病を撮り続けたことはもちろん炭鉱や朝鮮人の問題にも架橋して普遍的な差別の問題に迫ったことはとても重要」としている。
原爆の図丸木美術館は丸木位里さんと夫人の俊さんが32年間描き続けた原爆の図14点を所蔵していることで知られる。開館時間9~17時。4月9日まで(月曜日休館)。
(2023.3.1民団新聞)