国際交流基金の09年の調査結果をみると、韓国で日本語を学んでいる人は90万人以上で、世界で最も多い。学習者の年齢層は幅広いが、中学生と高校生で約84%を占めている。韓国の中学校で日本語が第2外国語科目の一つとして導入されたのは01年からだが、校長の裁量で科目が設定できる授業として始まった。
これは漢文、コンピュータ、環境、及び生活外国語(日本語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語)の中から1科目を選択しなければならないというものだった。
また、中学校の日本語の教科書は、09年までは『中学校 生活日本語 こんにちは』1種だけであったが、10年3月からは検定教科書『中学校 生活日本語』8種が採用されるようになり、選択の幅が広がった。
ソウル市内で実施したアンケート調査結果(趙大夏・2010)をみると、韓国の中学生は、簡単で実用的な日本語会話を習得したいと考えていることがわかる。韓国の教育人的資源部でも、中学校の外国語学習の目標は、日常生活に関して簡単な外国語でコミュニケーションできる能力の育成と外国の文化に関心を持つこと、としている。
中学校の教科書の会話文をみると、「〜です」「〜ます」を使った丁寧な表現の他に、友達との日常会話で用いる常体の表現が多くなっている。話題・トピックも日常生活に関するものが多い。そして、殆どの教科書が漫画を取り入れているのも注目される。中学生が好きな漫画を採用することによって学習意欲を引き出すとともに会話の場面設定を明確にしているようだ。
また、多くの教科書に日本の衣、食、住、及び学校生活、家庭生活に関するもの、年中行事、伝統文化、大衆文化、遊び等に関するもの、日本語の基本表現と関連した言語行動に関する記述がみられるのも特徴の一つ。
言語を学ぶ時、その背景にある文化、社会についても共に学ぶ必要があるのは当然であると思うが、相づちや身振り、手振りまで理解しようとしているのは注目される。
今後、このような教科書で日本語を学習し、日本の言葉だけでなく文化についても理解した中学生が大人になり、日本と韓国の人々がより円滑なコミュニケーションができるようになれば、両国のさらなる友好関係が築けると思う。
それは日本においても韓国の言語、文化に関する幅広い学習が必須となることは言うまでもない。
齊藤 明美(翰林大学校・日本学科教授)
(2011.4.27 民団新聞)