プラスチック射出成形
近畿鋳造所 李植会長
合成樹脂を原料とするプラスチック射出成形(しゃしゅつせいけい)は、金属の金型鋳造法とは異なり、比較的低い温度で高圧成形されるのを特徴とする。応用範囲は広く、さまざまな分野で使用されている。その方法で、自動車およびパチンコ機械の部品メーカーからの注文に応じて、各種部品を製作・供給する。「顧客のパチンコ機械部品メーカーは10社にのぼり、売上全体の8割を占める」
1500坪を超す敷地を持つ工場は、▽成形▽組み立て▽倉庫管理の3部門に分かれる。24時間フルタイムで稼働し、部品の種類は数知れない。社員はパートを含め30人、昨年度売上額は約12億円。
韓国で生まれ、10歳の時に叔父を頼って三重県の桑名市に渡って来た。夜間学校に通いながら、叔父の鋳物づくりを手伝った。
最初は鋳物業で
1960年に独立し、近畿鋳造所を設立。64年に法人化した。注文品は主に工作物や家庭金物、建築金物などだった。
「高度成長期は休日返上で働き続けた。納期に間に合わせるため、徹夜作業もしばしばだった。汚れ仕事なので人材の確保が難しく、少人数でこなすしかなかった。やけどなどは日常茶飯事で、その当時が最も苦労した時期だった」と振り返る。
ところが、中国から安価な鋳物が大量に入るようになり、地域の鋳物業者はどんどん減り続けた。「中小企業の鋳物業者が生き残っていくのは難しい」と将来に不安を覚え、99年、知人の紹介で思い切ってプラスチック成形射出に業種転換した。
「ちょうどタイミング良く、部品メーカーの知人から仕事を回してもらえたのは幸運だった。おかげでスムーズに転業することができた」
自動車やパチンコ機械の部品を主に製作するが、パチンコ機械の比重が徐々に大きくなっていく。「業績は順調に伸びてきたが、忙しい時と暇な時の差が大きいので、工場のシステムを全自動化し、人材は派遣やパートタイマーで調節している」
全自動化の工場
機械運転にトラブルが生じた時の対応には万全を期している。「製品の不良化を防ぐため安全対策には特に力を注いでいる」。半製品のパチンコ機1台に1人ずつ配置し、不良品の点検にあたるとともに、責任者が常時機械を管理する。
5年ほど前、社長職を長男の孝夫氏に譲り、会長となる。「機械関係のことは若い者に任せた方がよい」
現在、民団三重県本部の顧問を務める。「以前は3・1節や光復節などのイベントに大勢集まった。1世が年々減少する中で、民団の存在意義がわからなくなるのでは」と最近の民団離れに懸念を示す。しかし、地元の支部は「財政・活動面でしっかりしている」と強調する。週1回のゴルフが健康のもとだ。
◆(株)近畿鋳造所=三重県桑名市明正通3‐271‐2(℡0594・22・2240)
(2013.4.12 民団新聞)