北韓政権盲従から脱皮し
在日同胞に目向けよ
朝鮮総連は、1955年5月25日に結成され、今年で60周年となる。金正恩は元日に「祖国独立70周年と朝鮮総連結成60周年を迎え、全盛期を切り開くための闘いで成果を成し遂げると信じている」と朝鮮総連に新年メッセージを送った。
これを受け、朝鮮総連は金正恩への忠誠心を表すために様々な形で北韓体制の宣伝を一層強化するだろう。しかし、このような金氏世襲政権に対する時代錯誤的な盲従と北韓寄りの思想により、朝鮮総連は現地の同胞と日本人から孤立し、組織そのものが崩壊する危機に置かれている。
無理な不法送金財源基盤が破綻
一方、金正恩体制が始まってから、朝鮮総連に対する北韓の指導部の関心と態度が以前とは違うようだ。許宗萬・朝鮮総連議長が去年9月、8年ぶりに平壌を訪問した際、1カ月間滞在していたにもかかわらず、金正恩と面談すらしてもらえないまま帰国した事実がそれを裏付けている。
過去60年間、朝鮮総連は金氏王朝の最大の資金源として北韓の核・ミサイルの開発を支援するなど、北韓政権の保衛に忠実な道具として利用されてきた。朝鮮総連系金融機関の朝銀信用組合(朝銀)は、毎年一〇〇〇億円以上を北韓に不法送金したせいで破綻に至ったのだ。このように物心両面で金氏王朝に忠誠を尽くしたが、北韓指導部の冷遇に許宗萬議長は帰国後、「祖国が変わった」と不満を吐いた。
朝鮮総連は一時、民団より圧倒的優位にあった。朝銀の支援を受けた商工人たちはパチンコ事業を行い、朝鮮総連の強固な財源基盤となった。また、朝鮮総連は50年代末から80年代にかけ、「地上の楽園」とだまし帰国事業を実施、在日同胞と日本人妻を含む9万3千人余りを北送した。
しかし、北韓に移った後再び日本へ脱出した人たちは「北韓で経験したのは過酷な労働と拷問、差別で、まるで囚人または奴隷のような生活を強要された」と証言した。08年6月には、脱北したある女性が朝鮮総連を相手に「人権と自由を無差別に奪った悪魔のような団体」とし、訴訟を起こした。
また、朴斗鎭元朝鮮大学校教授は「金氏政権の実態と、日本人拉致が金正日の仕業であったことがあらわになり、同胞の朝鮮総連離れは加速した」と説明している。
国際社会は北韓政権の人権蹂躙行為に憤怒し、「北韓人権決議案」を国連安保理の議題として採択した。しかし、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」は、このような国際社会の取り組みについて「人権謀略騒動」だの、「米国の共和国敵対視政策によるもの」だのと北韓の立場を述べた。
これまで朝鮮総連は、北韓の海外工作支援や脱税、日本の安保問題に関する情報流出のみならず、日本人拉致工作、核・大量破壊兵器の開発支援、不正送金など数えきれないほど多くの犯罪に加担してきた。
住民を苦痛から解放する役割を
朝鮮総連は、最高裁判所の決定により中央本部の土地と建物を手放し、会員の組織脱退ラッシュで危機的な状況に置かれている。にもかかわらず朝鮮総連の指導部は、依然として金正恩の偶像化宣伝に集中するなど北韓の操り人形の役割を果たしている。
北韓の核開発やサイバー攻撃、ミサイル発射、民間人大量拉致と殺傷、大量餓死、公開処刑など、韓半島における災いは現在進行形である。朝鮮総連の北韓への盲従とこれまで北韓に送った膨大な資金が、このような恐ろしい災いをもたらした大きな要因とみられる。
朝鮮総連はいち早く過去の悪行を反省し、北韓政権と断絶し、在日同胞の権益保護に取り組む団体として生まれ変わるべきだ。また、朝鮮総連が本当に民族の復興を望むならば、独裁体制に苦しむ北韓住民のために、北韓を改革・解放の道へ導く役割を果たす必要がある。祖国と民族の歴史に許されない犯罪行為を今すぐに止めよう。
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プロフィール
イ・エラン
北韓の新義州軽工業大学・食料工学部卒業後、両江道にある国家科学技術委員会食品品質監督院に13年間勤務。97年8月に脱北し、中国、ベトナムを経由して韓国入り。梨花女子大学大学院の食品栄養学科を卒業し脱北女性初の博士号を取得。北韓式健康食専門店などを営みながら、北韓の伝統料理専門家として活躍中。
(2015.1.28 民団新聞)