掲載日 : [2023-06-21] 照会数 : 1305
在日弁護士排除から20年 出版記念院内集会
外国籍の弁護士が「当然の法理」を理由に調停委員としての採用を拒否されている。日本国籍がないことを理由に採用を拒否された在日同胞はこれまでに少なくとも14人を数える。日本弁護士連合会(小林元治会長)はこのほど、『外国籍だと調停委員になれないの?』を出版し、あらためて最高裁判所に運用の改善を求めた。20日には近畿弁護士連合会と共催し、記念シンポを参院議員会館で開いた。
調停委員は民事や家族間のもめごとを、当事者の間に入って、双方の言い分に耳を傾けながら調整し、合意形成に努力する非常勤の公務員。任命にあたっては「調停委員規則」で規定しており、そこには「日本国籍を要する」との規定は一切ない。
ところが、最高裁判所は「たとえ法律に書いていなくても、公権力の行使もしくは重要な施策に関する決定に参画する国家公務員であるからには日本国籍を有する者に限る」としている。これが「当然の法理」だ。
外国人排除は2003年、兵庫県弁護士会が家事調停委候補として韓国籍の梁英子弁護士(当時)を推薦したところ、神戸家庭裁判所が最高裁への上申を拒否したことから問題が発覚した。これに対して日弁連は、最高裁に宛て3度にわたる「勧告」、さらには「要望」、「意見書」、「会長声明」、「宣言」といった様々な形で粘り強く運用の改善を求めてきた。
院内集会で日弁連の小林会長は多様性尊重の社会にあっていまでは「現代の遺物」でしかないと述べた。また、当事者の白承豪弁護士も「そんなになりたいのなら帰化すればいい」と言われたことを明かしながら、「一個人の自己実現の問題ではない。日本社会における民主主義実現の第一歩となる」と力を込めた。
基調報告に立った名城大学法学部教授の近藤敦さんは「法の支配ばかりか、行政の適正な手続きとの関係からも問題」と厳しく批判した。
パネルデイスカッションでは梁英子元弁護士が「外国籍の調停委員がいると、調停室の空気が変わってくる。なにより、当事者が安心する」として存在の必要性を訴えた。高良鉄美参議院議員は「当然の法理には明文規定がない。なにが当然といえるのか。法の支配から見た人の支配ではないか。一日も早く死語にしないとならない」と真っ向から反論した。
近藤教授は「調停委員の仕事は公権力の行使からは最も遠いところにある。当然の法理は異常と言わざるをえない」と指摘した。
日弁連編『外国籍だと調停委員になれないの?』は東京の生活書院刊。2200円(税別)。問い合わせは03・3226・1203。