韓国の春川にある翰林大のキャンパスは、チンダルレやケナリが美しい。桜の木もあるが、開花にはもう少し時間がかかりそうだ。昼食後、キャンパスを散歩しながら黄色やピンクの花々を楽しんでいる人が多い。
学生たちの中には、授業が終わった夕方から暗くなるまで広場の芝生に輪をかいて座り、食べ物を持ち寄り日本の花見さながらに楽しんでいる人もいる。また、学科対抗のスポーツ大会も始まり、学内は活気に満ちている。
3月に新入生を迎えた韓国の大学では、学内での新入生歓迎会に続いて、MT(メンバーシップ・トレーニング)をするところが多い。MTとは、新入生歓迎会の一泊二日版のようなもの。
新入生と在校生が一緒に食事の準備をしたり、ゲームをしたり、話したり…。一つの行事を共に成し遂げることによって、先輩、後輩の絆をより強くし、親睦を深めるための合宿だ。実際にMTが終わると、友達やカップルができることが多いという。
MTといえば、何年か前までは川や湖の近くのプレハブを借り、大広間で5、6人に分けたグループごとに、学生たちが下宿にあるものを持ち寄り、キムチチゲやカレーを作ったものだ。
教員もそれぞれのグループに入り、学生と夕食を共にした。かつて私のグループがツナ缶一つしか持ってこなかったので、ヒヤヒヤしたのを覚えている。しかし、学生たちは慌てなかった。隣のグループからキムチを分けてもらい、おいしいキムチチゲができあがったのである。
自分たちには材料がなくても友達がいれば何とかなる、という信頼感のようなものがあったのだろう。私は、韓国の学生の助け合うようすをみて「臨機応変」というのはまさにこれだと感心した。
しかし、最近は少し違う。今年のMTは、小さな小屋が5、6棟あり、中央でキャンプファイヤーもできる郊外のバーベキュー場で行われた。宿泊施設も新しくておしゃれ。
また、先生方のために一つの小屋が用意され、何もかもが行き届いている。時代とともに少しずつ変化している。
しかし、形式は変わっても在校生が1年生を歓迎し、温かく迎え入れようという気持ちは変わらない。また、最近は新入生と教員との距離を縮め、大学への帰属意識を高めてもらうための新しい科目も準備されている。
新入生に対する学生と教員の配慮と思いやりが感じられる韓国の大学の春である。
齊藤 明美(翰林大学校・日本学科教授)
(2011.4.15 民団新聞)