「やはり出てきたか」。被災地で生まれやすい流言飛語を、大量に飛び交う大震災関連情報に紛れ込ませ、読者に特定の印象を与えようとする《報道》のことだ。「週刊新潮」(4月7日付号)は「ワイド特集『大震災』瓦礫に咲く花」の「ボランティアが目撃した『未収用遺体』を狙う強盗集団『作業現場』」の項で、こう言わせた。
「僕は車の中から彼らを見かけたのですが、日本人だったか外国人だったかも分からない。人が足を踏み入れられないような瓦礫と泥の中を3、4人で行動しているんです。遺体から遺体に移動しては、胸元に手を入れてガサガサとまさぐっている。救援の人かと思ったらどうも違うんです」
ボランティアが入れる地域に、遺体が野ざらしになっていたかどうか、などはさておこう。「外国人ではなかったか」という《誘導質問》でなければこういう答えにはならない。信号や街灯が消えた被災地では、「夜が怖い。○○人が凶器を持って集団で歩いている」といった《情報》が出回っていた。こうした現象を戒めるのがメディアの責務ではないか。
津波が引いた直後から、在日同胞の事業所から金銭が奪われた事例はいくつもある。元プロ野球選手や未成年者ら日本人が窃盗などで逮捕されたとの報道もあった。だが、同胞を含む外国人がドサクサ紛れに悪事を働いたという事実は警察庁も確認していない。
デマはインターネットの掲示板やメールでも流される。惑わされることがないよう、警察庁は繰り返し注意を喚起している。「よみうり時事川柳」(2日付)にこうあった。「怖いのはウ素800の飛散なり」。(E)
(2011.4.15 民団新聞)