【宮城】民団宮城本部(李根団長)は7日、石巻市の避難所になった市立門脇中学校で900人分のコムタンスープなどの炊き出しを行った。同中学校には約750人が避難生活を送っており、世話をする教職員やボランティアなど含めると800人を超す。
この日、民団山形本部(車寿鎔団長)と民団韓食ネット(朴健市会長)、婦人会宮城本部(李京子会長)が協力、民団中央対策本部からも韓在銀、金昭夫副団長らが駆けつけ、総勢30余人が参加。
避難所に身を寄せた被災者は数十人単位で自治会を構成しており、案内放送が流れると各自治会の世話役がトレーを持って集まった。スープ9杯を一度に運べる大きさ。温かいスープ、ライスを運んでは取って返すことを繰り返す。さらにはキムチ、韓国のりをトレーに山盛りにして運んだ。
婦人会宮城が炊き出し場に併設したお茶コーナーでは、高麗人参茶、双和茶、ゆず茶を振る舞ったほか、各種のお茶をトレーに載せ、避難所内部をくまなく回り被災者の好みに応じて直接手渡した。
娘さんを津波で失い、孫娘2人と避難所生活を続けてきた女性は、スープを「辛味がちょうど良く、美味しい」と言い、「自分は韓国料理をよく知らないが、5歳の孫が大のキムチ好き。だから3パックをもらっておいた」とはにかんだ。
通りがかりの被災者も立ち寄った。リュックサックを背負った60代の2人連れの女性は、スープをあっという間に平らげ、「家は壊れた。お金がない」と嘆き、「寝込んでいる友人がいるので、頂いたキムチやのりを持っていく」と立ち去った。
コムタンスープは前日、民団韓食ネットの副会長で、韓国料理研究家の崔誠恩さんが14時間かけて仕込んだものだ。キムチのパック1000個は4人が1日がかりで準備した。
韓国色を全面に出した炊き出しは、違和感がないどころか大好評。10代後半の少年3人連れは「久しぶりの肉だ。いっぱい入れて」、40代の女性は「やっと人間らしい食事をした感じ。ご飯はいらない。スープに大根をいっぱい入れて」とリクエストした。
この日、炊き出し会場には「コムタンスープで元気を出そう」と書かれた横断幕と、韓国京畿道の官門小学校児童が被災者に寄せた手紙を訳文つきで飾ったディスプレイが掲示されていた。学校側はこれを記念に取って置きたいとのこと。合わせて、手紙に対する返信が4通、民団に託された。
炊き出し隊が帰路に着こうとしていると、赤間彰校長と平塚隆教頭とともに70人ほどの被災者が見送りに出てき、いつの間にか双方が涙ぐむ「感謝のセレモニー」に。まったく予定にないことだった。
赤間校長はハンドマイクで、「在日の皆さん。本当に美味しかった。この味を忘れないでしょう」と礼を述べると、炊き出し隊を代表した金副団長は、「皆さんのご心労を慰める言葉が私にはありません。せめては、日本に住む韓国人の気持ちを届けに来ました。どうか勇気と元気を」と言葉を詰まらせた。
避難所の人たちは炊き出し隊が校門を出るまで、手を振りながら見送っていた。
(2011.4.15 民団新聞)