6・25韓国戦争に従軍した学徒兵たちの実話を素材にした『戦火の中へ』を封切り日の午後2時の部で観た。力作と言われる割に空席が目立っていた。だが、「少し寂しいな」なんて思いはたちどころに消え、スクリーンから一時も目を離すことができず、自分でも「まさか」と思うほど目がウルウルしてしまった。
韓国映画の上映が珍しくなくなっても、昔からの習い性で、観客の反応を自然と確かめる自分がいた。
延々と続くかに思われるエンドロールがすべて終わって点灯されるまで、誰も席を立たなかった。正確に言えば、若い女性が1人、そ間際に出て行っただけ。観客の多くは年配者で、男女は半々ほど。皆さん一様に、目を赤くしていた。70歳前後と思しき男性は「イヤーッ、いい映画だった」とつぶやきながら出口に向かった。
主人公の学徒兵は10代後半に入ったばかりの、小銃すらまともに触ったことのない高校生たちだ。最後の防衛線となった洛東江の戦いでは実際、高校生たちが大いに奮闘した。大砲を目標に向かって正確に撃つにも、数学の知識が必要であり、当時の韓国では高校生たちが貴重な戦力だったのだ。
こうした学徒兵のなかには、後に大統領となったのが2人、政府高官になった人物は少なくない。
映画の最後には、素材となった学徒兵の生存者からのメッセージがあり、この戦いで北韓人民軍の侵攻を11時間半遅らせ、韓国軍と国連軍の反撃に寄与した、との字幕があった。映画となった浦項の戦闘だけでなく、多くの戦場で自分の命を犠牲に祖国の命を守った学徒兵がいたことを、決して忘れまい。(N)
(2011.2.23 民団新聞)