丸善の社長だった小城武彦さんが日本的組織の特性を「社会や会社より、自分の周囲の数十人への忠誠心が強い」と評せば、作家の半藤一利さんは「日本人は実は右か左か二者択一が好きで、どちらかに大きく流れ、集団催眠にかかりやすい。閉塞感が出てくると、強い者への待望論が生まれる」と指摘する。
識者2人の見解は対立しているようでも、比較的新しい世代とやや古い世代とで、焦点が少しずれただけなのかも知れない。人間の特性などそう簡単に見極められるものではないにせよ、賢者の蘊蓄(うんちく)にはついつい耳を傾けたくなる。
それはさておき、小城さんの見解には「へぇーそうかなー、それは韓国人の特性じゃないの?」と首を傾げたのに対し、半藤さんのそれには得心するものがあった。現在の日本がまさにそうだからだ。昨年夏から一挙に険悪化した韓日関係の一端を示すこの数字を見て欲しい。
今年上半期、韓国の対日輸出は前年同期比で12%の減少なのに、日本の対韓輸出は12%増えた。韓国を訪れる日本人観光客は26%減少したのに、訪日韓国人はむしろ38%の伸びを見せた。円安の影響だけではないと分析されている。
韓国人は「反日」を叫んでもそれにさほど拘束されるわけではない。しかし、日本人は「嫌韓」の空気が広がればそれなりにちゃんと付き合う。そんな違いが数字にはっきり表れた。
集団は強いが個がもろい日本人。集団としてはもろいが個が強い韓国人。その長短は時代状況によって攻守ところを変えるだろう。グローバル化時代は知識に基礎を置く個の力がものを言う。韓国人をもう少し長い目で見る価値はある。(D)
(2013.10.16 民団新聞)