掲載日 : [2016-05-25] 照会数 : 4435
32年の活動に終止符…在韓被爆者渡日治療委員会
「一定の役割果たした」
民間の寄付で600人招請
【広島】在韓被爆者渡日治療広島委員会(河村譲会長)が、「在外被爆者の尊厳回復に一つの役割を果たし終えた」として今春、32年間の活動に終止符を打った。
これまでに韓国から広島に招請し、治療を施した被爆者は約600人におよぶ。公的機関からの支援は皆無。渡航費は全国の会員から寄せられた会費とカンパをあて、検査治療は原爆手帳で行った。民団広島本部も韓国人原爆犠牲者慰霊碑の平和公園内移設が実現した99年、建設募金のうちから委員会に巨額の寄付を行っている。
同委員会の結成は1984年。医療の機会に十分に恵まれていなかった韓国の被爆者を「民間の力でなんとかできないか」と、広島市内で病院を開業していた河村虎太郎院長が呼びかけたのが始まりだった。
80年から5年間続いた韓日両政府の合意に基づく渡日治療が両国政府の折半だったのに対し、会が費用を全額負担するという「招請治療」だった。韓国では莫大な費用がかかるとされる人間ドック並の精密検査で、自覚症状のないがんが発見されたことも。
一方、手帳を持たない被爆者は取り残された。高齢者や重傷患者も、渡日には大きな壁が立ちはだかった。時間的に余裕があって、比較的体力のある者が渡日できた。
委員会が渡日治療を継続してきたことで、在韓被爆者の存在や実情が日本社会に広く認識されるようになったことも大きい。委員会は在外被爆者の権利闘争を積極的に後押し。健康管理手当問題で郭貴勲さん、特別手当問題で李在錫さんなどが、在外被爆者に対する支給制度の是正を求めて訴えたのも、委員会招請で渡日治療したことが強い動機となった。
昨秋には在外被爆者も居住国で医療費を全額受給できるという最高裁判決を勝ち取った。委員会では「韓国の医療水準は高いだけに、渡日治療の役割は終了したことを実感している」と語った。
(2016.5.25 民団新聞)