掲載日 : [2016-06-29] 照会数 : 4712
EU離脱で韓英貿易に暗雲…急がれるFTA交渉
英国は欧州連合(EU)からの離脱か残留かを問う国民投票で離脱する決定を下し、世界の経済・政治秩序に衝撃を走らせた。貿易依存度の高い韓国経済にとっても大きな不安要因になっており、政府・企業は事態の推移を見極めつつ、波動を最小化するための対策に乗り出した。
進出企業 景気後退に懸念も
韓英間の直接貿易規模は年130億ドル規模とさほど大きくない。だが、英国はEU加盟国のうち韓国製品を最も多く輸入しているほか、EU諸国への物流センターにもなっている。
産業通商資源部は26日、英国との自由貿易協定(FTA)を締結する方針を明らかにした。現在、韓英貿易には韓国とEUのFTAによる優遇関税が適用されている。英国は今後2年間EUと離脱交渉を行う。
この間、韓国とEUのFTA効力は維持されるが、離脱手続きが終わるまでに韓英FTAが締結できない場合、英国が定める一般関税規定の適用を受ける。そうなれば、英国に自動車を輸出する際、10%の関税が課される。現在はほとんど課税されていない。
産業通商資源部はまた、EUとのFTA改定も進める。英国に対するEUとのFTA効果が消滅することを受け、協定文書に関連内容を反映するためだ。同部は「英国が外れる韓・EU間FTAへの影響を綿密に分析し、国益が侵害されないよう協議する」としている。だが、英国はEUとFTAを結んだ53カ国と一斉に再協議を推進することはできない。貿易規模が大きい国から協議に入ることになり、韓国はドイツや米国より後回しになる確率が高く、痛手は避けられない立場だ。
KOTRA(大韓貿易投資振興公社)ロンドン貿易館は、国民投票の結果が判明した24日、欧州地域に進出している韓国企業にアンケート調査を行った結果、回答企業の71%が「営業活動に否定的影響を及ぼすだろう」との見解を示した。英国に法人や事務所、生産拠点を置く韓国企業(公企業含む)は14年末現在で80社とされる。
ロンドンに欧州本部がある三星電子は、移転する可能性の検討に入った。だが、同社の関係者は、生産拠点がポーランド、ハンガリー、スロバキアにあるため、本部移転問題より、景気不安定が欧州全体に広まることを懸念している。
生産拠点をポーランドに置き、昨年、欧州本部をロンドンからドイツのデュッセルドルフに移したLG電子も、同じ懸念を抱く。チェコとスロバキアに生産拠点がある現代・起亜自動車は、韓英FTAが締結されなければ対英輸出の足かせになる。
為替の動向からも目が離せない。円高やドル高は、韓国にとって輸出拡大と新市場開拓の機会になる半面、ウォンの価値が下がって大規模投資資金が流出する可能性がある。韓米、韓日の通貨スワップの再開を求める声も強まっている。
(2016.6.29 民団新聞)