掲載日 : [2016-08-15] 照会数 : 4809
教化所の実相…体験脱北者新たな証言
毎日死者の生き地獄
5年以上宣告者 生存率10%
教化所に収監されながらも脱出に成功し、この春に韓国入りした脱北者2人の証言記録がある。感情を排して淡々と収監生活を語ったもので、人権のかけらもない実態が細部にわたって赤裸々だ。一人は咸鏡北道会寧のチョンゴリ教化所(男性2000〜3000人、女性1000〜2000人)、もう一人は平安南道の价川教化所(男性約3000人、女性約1500人)出身。要約・紹介する。証言から過酷の度が増していることが分かる。
過酷の度増す
教化所に収監されると公民権をはく奪され、前歴にかかわりなく非人間的な立場に転落する。教化刑5年以上を宣告されれば、生きて出られる可能性はほとんどない。収監者一般の生存率は30%であるのに対し、5年以上は10%に激減する。
10坪余の宿所に50〜60人が押し込められる。6時=起床(夏季は5時半)、6時〜6時半=寝具整理および点呼、6時半〜7時=面会食、食事および洗面(最近許容)、7時〜7時40分=作業用の物品など保守、7時40分〜8時=班別集合、8時〜19時=作業(昼食30分)、19時〜20時=夕食および休息、20時〜21時半=学習、21時半〜22時=点呼、22時=就寝。これが日課だ。
作業は50〜60人で班を構成して行うが、労働強度や食事に差があり、収監者は配定結果に喜悲を交錯させる。野菜班は教化所要員用の野菜を栽培するが、牛でもきつい耕作を強いられる。カツラ制作班は一人当たりカツラ一つを5日ごとに完成させねばならない。2011年までは7日間で一つだった。木の伐採・運搬を行う薪(たきぎ)班、金鉱石採取班は遠距離を移動せねばならず、危険度も高いため毎日のように死者が出る。
人気があるのは畜産班だ。通常の食事より栄養価の高いブタやウサギなど家畜の飼料をこっそり食べることができ(発覚時は処罰)、宿所も畜舎に近い。教化所要員にコネのある収監者が賄賂をおくってでも入り込もうとする。
食事は死なない程度に給されるに過ぎず、収監者の8割以上が虚弱状態にある。ネズミの肉、堆肥から出るウジなどが最高栄養食として人気が高い。人肉や死体に発生するウジを食べているとの噂が流れたこともある。
貴重な命の綱が面会食だ。外部の家族が面会に来れば、通常一食の2倍にあたる200㌘内で食事ができる。面会は原則3カ月に1回だが、賄賂により追加できる。人身売買犯、脱北者、金属窃盗犯などの面会不許可者、貧困層の収監者は栄養失調で死に至りやすい。
教化所の管理要員らは面会者に物品の上納を要求するため、収監者家族の負担は大きい。石鹸、洗剤、歯磨き粉、靴下などの上納品を自家用にするか、教化所前の商店に売り蓄財している。
医務室(病房)は形式的な存在で、正常な医学教育の履修者はいない。収監者のうち過去に医者や衛生員の経歴がある者が医療にあたるが、医薬品は簡単な消毒薬がすべてだ。医務室は臨終までの待機室にすぎない。
遺骨は不返還
栄養失調や過酷労働による体力低下、伝染病、規則違反者への無慈悲な見せしめ暴行、逃走による被殺などによって毎日死亡者が出る。冬季には凍死も加わって20人以上になることも珍しくない。死体は「死体室」に積まれ、週間単位で火葬されるが、火力が弱いために一部は放置される。死亡は家族にも知らされず、面会時に知ることになるが、遺骨は返還されない。
病気による保釈や赦免も大幅に縮小された。2014年までは人身売買犯、脱北者なども賄賂次第で病気保釈や赦免が可能だった。だが、脱北者に対する取り締まりが強化され、体制に危機をもたらす事犯については不許可となった。
収監者は生き地獄にあっても、必ず生きて出るつもりで満期が来るのを指折り数えている。一般の住民は教化所の実態をよく知っており、収監されれば生きて再び出られないと認識しているだけに、刑期を終えて出所した者を英雄扱いする。
(2016.8.15 民団新聞)