掲載日 : [2023-03-01] 照会数 : 4212
【第77回定期中央委員会】2023年度基調案②
Ⅲ 23年度重点方針
組織基盤強化
財団支援金、増額確保
コロナ禍により、本団の事業が中止、縮小に追い込まれ、財団支援金を使用することができず、返納する支援金が少なからずありました。このため昨年は本団の支援金が若干削減されましたが、この間、呂健二中央団長を中心に本国要路に繰り返し要望し、財団支援金の増額が確保されました。また新規の事業として「民団・留学生支援センター」(後述)を新設するとともに、超過疎地方本部に対する運営費の支援を強く要請しています。各地方本部は財団支援金が満額保障されましたので、諸事業の円滑な推進に努めていく必要があります。
中央割当金減額措置
2013年度に中央割当金は「中央委員+代議員数×1名当りの基準額」であることを確認していますが、とくに過疎地方本部においては、少子高齢化による団員の減少や支部機能の停滞等、財政難に陥っています。複数の地方本部からも中央割当金の減額措置や中央委員・代議員の減員等の要請が来ています。このため、中央執行委員会において数次にわたり調整した結果、段階的な減額措置を取ることを決定しました。また、今年より、中央委員・代議員数の調節もしていきます。
同胞家庭訪問、団員拡充運動
組織の液状化と過疎化が加速しており、それに伴い、組織の力量が弱体化しているために、私たちは組織基盤の強化といっているのです。「組織」は国家と個人の間にある集団です。個人では弱いところを集団として、その理念、権益を擁護するもので、団結した活動、運動こそ組織の「力」です。民団の目的は綱領・宣言・政策(方針)を実現することであります。
課題は、①人をふやすこと、②人をつくること、③財政を確立すること、④組織の整備をすることです。今何よりも「親睦」が必要です。コロナ禍で集まる自由も対面する自由も少なくなりました。原点に返り、同胞家庭訪問をし、繰り返すほど良い効果が出ます。会って、激励し、情報交換を通して意思の疎通を図ることは大事です。災害が生じた時、メールやラインで連絡網をつくっておくと安心です。また人材を発掘することも大切なことです。なによりも家庭訪問を事業と見做し、積極的に団員拡充運動をやっていきましょう。定例行事やイベント事業を通じて多世代や地域住民が楽しめる事業を進めていくことが肝要です。また各種ワークショップ、セミナー、リーダー育成スクールを通じて組織の基盤強化と後継者育成に努めます。
同胞社会をつなぐ「KJアプリ」を開発、運営
また、本団と団員をつなぐスマートフォンアプリ「KJアプリ」を開発し、この春から運営します。これによって、団員だけではなく、本団との接点がない同胞(日本国籍同胞、新定住者)と連携し、彼らが必要とする情報提供や便宜をはかり、新規団員の獲得につなげていきます。
在日同胞社会の交流と和合
韓人会や日本籍同胞を積極的に受入れ、対話する場を設けます。定期的な集まりを作り、情報やイベント計画などを共有し、協力し合う関係をつくっていきます。また同胞社会の交流を通じて、在日同胞社会の和合に努めていき、多様な同胞と民団をつくっていきます。
同胞の生活と権益擁護
在日同胞社会の交流と和合
「生活相談センター」の充実化
民団は生活者団体であります。同胞の悩み事を解消する「民団生活相談センター」は2007年に設立しました。この間、地方の相談センターが18か所でき、専門家を置いて同胞の拠り所として機能しています。2022年度は3年ぶりに本国セミナーを開催しました。2023年度も継続して実施します。またこの間の運動が功を奏して、自治体や公館からの紹介で相談を受ける事例も増えています。本年は地方センターを3箇所増やし、相談の充実化と拡張に努めて参ります。
ヘイトスピーチの根絶
差別は「言葉」なくしては生まれません。特定の民族や人種に対する偏見、差別、憎悪を煽るヘイトスピーチの根絶は私たちにとって必須のものです。2022年8月30日、民団愛知県本部と韓国学校の雨どいに火をつけ、またウトロ地区の空き家に放火した犯人に対し、懲役4年の実刑判決を言い渡しました。だが、これで終わったわけではありません。犯人は判決後、「実際は反省していない、私のように差別、偏見、ヘイトクライムの感情を抱く人は多いことを認めなければならない」と言い切っています。
また東京都の外郭団体主催の企画展で関東大震災の朝鮮人虐殺を事実として述べた場面がある映像を上映することに「懸念がある」としたメールを送って、実質的にこの企画展を中止に追いやった都の人権施策担当の職員は、小池百合子知事が毎年、大震災の朝鮮人犠牲者を悼む式典に追悼文を送っていない点にも言及していました。この都職員の人権感覚を疑わざるを得ません。
また「群馬の森」の韓国朝鮮人強制連行犠牲者の追悼碑「記憶反省友好」の碑の設置許可更新申請を不許可とした県の行政処分を受入れ、門前払いとした最高裁第2小法廷にも、同質のヘイト是認と「歴史否定主義」を感じます。ヘイトスピーチは根深く、生涯にわたってなくしていかなければならないものであります。人権と平和の大切さを伝え続け、ヘイトクライムを拒絶する断固とした意思を示し続ける必要があります。
地方参政権の獲得
2022年はヘイトスピーチの根絶と地方参政権の獲得のために、ジュネーブの「国連・自由権規約委員会」に当事者としてレポートを提出し派遣要望活動を行いました。11月には日本政府への総括所見が出て、とくにヘイトスピーチ、ヘイトクライムの根絶について、罰則のある包括的な差別禁止法の必要性が強調され、また地方参政権においては「永住コリアンとその子孫に地方選挙での投票権を認めるよう関連法の改正を検討すべきである」と画期的な勧告を出しています。本団は、昨年まで4回目となる国連への要望活動を今年の活動につなげていきたいと思います。地域に長く住む住民として、納税など応分の貢献をし生活している私たちに、地方自治体の参政権は必要不可欠な人権であります。30年にわたる本団の地方参政権運動の歴史と実績を私たちは研修会等を通じて学ぶ必要があります。
関東大震災朝鮮人虐殺100年「第5回人権セミナー」開催
2023年度は、関東大震災朝鮮人虐殺100年になる年です。虐殺の真相をさらに究明するとともに犠牲者の方々を追悼し、規模を拡大して、関東大震災の前日8月31日に開催する予定です。プレイベントとして映画上映等も実施します。
また歴史資料館においても「100年」を期してセミナー等を催す予定です。
次世代育成
次世代の育成なくして民団の将来はありません。少子化への危機感がありますが、次の世代のための環境づくりと「場」を提供していきます。「オリニジャンボリー」は昨年一昨年とコロナ禍のため中止となりました。ワクチン接種をしていない子どもたちも多いことから、今年もやむなく中止しますが、指導者対象の「オリニ事業促進セミナー」を地域ごとに実施し、オリニ土曜学校やサマースクール、クリスマス会の「場」づくりにつなげていきます。各地域で「オリニ会」をつくり各種親睦・地域共同事業をやっていきます。また好評の中高生対象の「韓国文化探訪スクール」や大学生対象の「ライジングスターセミナー」を継続して実施します。教育において「金を残すのは下、仕事を残すのは中、人を残すのは上」と言います。人材の育成に最大限の力を注いで参ります。
また本国留学・修学制度を活用して、各種奨学金制度、在外同胞財団の各種教育プログラムを積極的に利用するよう案内していきます。
「民団・留学生支援センター」新設
日本に留学してきた韓国学生に日本国内の適切な生活環境を提供するための「民団・留学生支援センター」(仮称)を設立します。民団の価値を高めるとともに、次世代育成の一環として、グローバル人材の育成に寄与し、地域社会との交流をはじめ、韓日友好交流増進にも寄与することを支援目的としています。また災害時の支援や留学生の孤立化を防ぐ支援にも努めていきます。
韓日友好促進
国境は市民レベルでは低くなっていますが、政治がそこに追いつくのはいつのことでしょう。隣国同士の首脳が会談するまで3年を要したことは尋常ではありません。韓国の政権交代を機に、両国の外交協議の機運が高まっています。尹錫悦大統領は2022年5月の就任以来、歴史問題で悪化した日本との関係改善に意欲的な姿勢を示してきました。その最大の理由が安全保障環境の悪化です。「自由を脅かす挑戦」に対して、韓日両国は「力を合わせていかなければならない隣人」です。また在日にとって、韓日関係は死活問題であります。私たちは、ことあるごとに韓日友好の大切さを訴えてきました。その一つの結実が昨年11月13日の韓日首脳会談です。懸案問題の解決をはかり、意思の疎通を継続していくことで一致しました。
「韓日パートナーシップ共同宣言」25周年記念事業
今必要なのは、大局を見据えた関係づくりであり、本団は1998年の「韓日パートナーシップ共同宣言」の更なる発展をめざして、民間レベルで両国の草の根の友好親善活動に尽力していきます。
朝鮮通信使において『誠信交隣』を説いた雨森芳洲の「誠信とは、互いに欺かず争わず、真実をもって交わる」ことを韓日親善活動のモットーにしなければなりません。今年は「韓日パートナーシップ共同宣言」から25周年にあたる年です。「共同宣言」を継承し、発展させる記念事業を通じて、韓日友好活動をより活性化させていきます。
平和統一寄与
昨年9月に、北韓は、「核武力政策法」を採択し、金正恩が施政演説を行い、「絶対に先に核放棄、非核化をすることはなく、そのための協議も、その過程で引換えにするものもない」と表明しました。
11月の初めには、北韓が発射した20発以上のミサイルの1発が海の軍事境界線とされるNLLラインを「初めて」越えて「一触即発」の危機がありました。
韓半島の非核化と平和定着のために
現下の緊張状態を受け、開催された11月の韓日首脳会談で、両首脳は「北韓が前例のない頻度や態様で挑発行為を行なっていることは、韓国及び日本を含む地域の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、且つ国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦である」と強く非難しました。韓米日首脳会談でも北韓問題は中心議題となり、北韓ミサイルのデーターを即時共有することになりました。
12月には、日本政府は、戦後の安全保障政策の大転換をし、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有などを盛り込んだ国家安全保障戦略など、安保関連3文書を閣議決定しました。
韓半島の緊張が高まっている中、私たちに何ができるのでしょうか。対話をもって、北韓の核ミサイルの脅威をなくす方向へ導き、段階的な非核化をめざす現実的なアプローチをしていくことが必要です。力と力による対抗の構図では埒があきません。粘り強く「平和」外交をしていく必要があります。
また北送された同胞(93,339人、内6,679人の日本人妻子)の人権問題も私たちにとって忘れてはならない課題です。そのための北送同胞「歴史検証シンポジウム」を今年も継続していきます。本年はまた「脱北者支援センター」設立20周年になります。関東地区と関西地区が合同で記念交流会を開催します。
私たちは、必要な改革に各自が踏み込まなければなりません。本団は在日同胞社会の代表団体であります。同胞の生活と権益を守り、多文化共生社会を実現することが責務です。時代に相応した民団に変革し、同胞社会、韓日関係を良くしていくことが私たちに与えられた社会的役割であります。コロナ禍とウクライナ事態を克服し、ともに力を合わせて本年を民団の融和を育む年にしましょう。