在日韓国人信用組合協会(韓信協 呉龍夫会長)の会員6組合の通常総代会が6月中にそれぞれ開かれた。3月末決算(2013年度業績)によれば、会員組合総体で預金は前年同期比4・3%増の6785億4600万円、貸出金は1・7%増の4295億4800万円。各組合とも業績は堅調で、新たな規制に対応すべく自己資本比率をそれぞれ引き上げた。
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厳しい中健闘光る
呉龍夫・韓信協会長に聞く
パチンコホールや飲食、ホテル・貸しビル、土木・建築やスクラップなど、同胞が多く携わる業種の環境は依然として厳しい。しかも、地方部には人口減の悩みがあり、都市部には気の抜けない激しい競争がある。
苦しい状況にもかかわらず、韓信協の各会員組合の業績は堅調だった。融資先に対する親身なコンサルタント業務の成果と言っていい。人材教育の浸透によって、役職員の資質と専門性が向上してきたからだと思う。
信組業態は、各級金融機関のなかでも地銀や信金による低金利を前面に出した肩代わり攻勢などの競争にさらされている。会員組合は特に、顧客が分散しているため営業コストの負担が大きいこともあり、貸出金利を高めに設定せざるを得ない。こうした弱点を埋める主な手立てがきめ細かな営業であり、コンサルタント業務だ。
会員組合の組合員・預金者の過半は地域の日本人が占めている。だが、その資金の利用者のほとんどは同胞であり、組合運営の意志決定に参画する総代の8割も同胞であることをいつも意識している。民族金融機関であると同時に地域の信組でもある。責任は二重に重大であることを常に自覚し、会員組合の相互協力を密にしながら経営基盤の強化に励みたい。
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あすか信用組合
配当2%に引上げ
あすか信用組合(金哲也理事長。本店・東京都)は27日、新宿の本店で第48期。総代113人中100人(委任状53、代理出席1)。
預金は前期比103億円増の2106億円、貸出金は58億円増の1241億円だった。預貸率は58・93%。純利益は7億9700万円から13億4400万円に倍増した。
預金伸張にともなう利払いコストの増加により業務純益は微減したものの、不良債権処理額が大幅に減少したことで、経常利益が伸びた。自己資本比率は0・31ポイント増えて7・75%。出資配当は前年の1%から2%になった。
金理事長は「事業計画をほぼ達成し、満足のできる決算になった」とし、「円安による物価上昇や来年度に予定されている消費税の再引き上げをにらみ、今期は一段と厳しい事業計画を策定した。また、今後10年を見据え、中期経営計画を準備中だ」と明らかにした。
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信用組合広島商銀
貸出減も増益維持
信用組合広島商銀(井上一成理事長。本店・広島市)は25日、本店で第53期。総代112人中111人(委任状53)。
預金は流動性預金の確保に努め7億1200万円増の1402億400万円となった半面、貸出金は新商品「太陽光発電事業融資」を新設し、ビジネスローン「ファースト300」の取り扱いを開始したものの、12億9300万円減の916億8200万円にとどまった。預貸率は65・37%。
金利競争の激化にともなう貸出金利の低下などで資金運用による収入は減少しても、預金金利の引き下げ効果があり、純利益は5800万円増の2億1500万円を計上した。出資金は2億2300万円増え、自己資本比率は7・16%。配当率は2%を維持した。
井上理事長は「今年を『人材育成元年』と位置づけ、職員の能力向上に注力する。初任給を引き上げ、若手のベースアップを実施した」と強調。
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横浜中央信用組合
26%の自己資本率
今年3月に中央商銀とあすなろ信組が合併して誕生した横浜中央信用組合(呉龍夫理事長。本店・横浜市)は27日、横浜市内のホテルで第1期。総代221人中141人(委任状71)。
預金は26億6600万円増の1148億9800万円、貸出金は36億3400万円増えて797億9600万円となった。預貸率は1・6ポイント伸びて69・45%。自己資本比率は公的資金の導入や出資金増強で26・2%と155信組の中で最も高い。
合併両組合の陣容をそのまま継承した総代・理事の員数をスリム化し、理事23人と監事3人を新たに選出した。
呉理事長は、各界の合併支援に改めて感謝し、「同じ過ちを二度と繰り返してはならないとの決意で、これまでの負の清算、皆様へのお詫びからスタートした。同胞社会、地域から本当の信頼を得る組合づくりに邁進する」と決意を表明した。
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九州幸銀信用組合
預金1千億円台に
九州幸銀信用組合(溝江雅夫理事長。本店・福岡市)は本店で第58期。総代112人中60人(委任状24)。
同組合は、理事長であった呉龍夫氏が関係機関の強い要請で横浜中央信組の理事長に就任して以降も、積極的な営業方針を踏襲し、預金・貸出金・出資金の3部門で計画を上回った。配当率は前年同様の1・2%。
預金は1030億4800万円。104億4530万円を上積みして1000億円の大台に乗った。貸出金は37億8600万円増の613億6500万円。預貸率は59・55%。自己資本比率は0・15ポイント伸びて5・96%に。純利益は6900万円増の3億6400万円となった。
「第3次中期経営計画Next Stage2013〜原点からの挑戦〜」をスタート、「組織力強化、取引先への浸透、人材の育成」に取り組んだ。提案・支援・相談業務を積極化する方針だ。
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信用組合愛知商銀
純益約4億伸ばす
信用組合愛知商銀(李國雄理事長。本店・名古屋市)は愛知韓国人会館で第61期。総代119人中111人(委任状51)。
預金は27億5900万円増の840億4400万円、貸出金は36億6200万円減の605億5800万円。預貸率は6・95ポイント下がって72・06%に。純利益は3億9300万円伸びて5億3700万円となった。自己資本比率も2・56ポイント上昇の8・02%。
子会社を含めた連結決算で、未処理損失金2800万円が次期繰り越しとなったため、配当は見送った。
李理事長は「適切な資金提供と貸出先への柔軟な対応に努めてきた。各種経営相談など金融コンサルティング機能を発揮していく」と抱負を語った。プロジェクトチーム「得意先融資推進会議」がすでに発足しており、優秀な職員の意見や感性を営業施策に反映させ、新商品の開発などに力を入れていく方針だ。
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信用組合岡山商銀
配当率2%を維持
信用組合岡山商銀(梁炳玉理事長。本店・岡山市)は本店で52期。総代109人中91人(委任状23)。
預金は12億7200万円増えて256億7800万円となった。しかし、貸出金は金利競争のいっそうの激化によって10億4700万円減の120億2100万円。預貸率は50%を下回る46・81%に。
国債等債権売却益が増加したものの、不良債権の早期処理や貸倒引当金の積極的な計上を進めたことで、純利益は昨年をやや下回る1億1200万円にとどまった。自己資本比率は0・67ポイント上がって9・09%。配当率は前年と同じく2%となった。
梁理事長は「景気回復が期待されるが、経営環境は依然として厳しい」と展望し、「リスクを適切に管理しつつ、新規融資や顧客企業の育成・成長のための支援にも積極的に取り組む」との考えを示した。
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3期連続して増益
近畿産業信用組合
近畿産業信用組合(大本崇博理事長。本店・大阪市)は、大阪市内のホテルで61期。総代202人中103人(委任状51)。
預金は502億9000万円増えて1兆2556億円、貸出金は551億3900万円増の6725億円。預貸率は53・56%。
「5カ年中期計画PROJECT100」が初期の計画を上回る成果を上げた。純利益は6億5000万円伸びて45億7500万円。3期連続の増益となった。自己資本比率は0・34ポイント上がって9・61%。配当率は前年同様2%。
中期計画2年目の今期は、預金1兆3056億円、貸出金7225億円、実質業務純益は過去最高の75億円を目指す。
役員は26人から19人に縮小、大本理事長が再任された。昨年、非常勤理事となった青木定雄ら3氏は退任となった。
(2014.7.9 民団新聞)