夫婦共に韓国人の場合、離婚については韓国法が適用され離婚に必要な手続及び離婚原因の有無は韓国法に従います。
韓国法でも協議離婚の制度があり、協議離婚自体は認められています。
ただ、韓国法は離婚という重大な問題について離婚しようとしている当事者がその重大性を認識しているのか等について確認する制度を設けており、離婚手続が日本人夫婦または一方が韓国人で他方が日本人の夫婦の場合と比べ、やや複雑になっています。
具体的には、日本に在住する夫婦が離婚しようとする場合、必ず夫婦が一緒に夫婦の居住地を管轄する総領事館を訪問して協議離婚意思の確認を担当領事の前で受けなければなりません。
離婚意思の確認には、次の手続があります。
▽韓国総領事館に、離婚意思確認申込みをし離婚に関する案内と相談勧告を受けます。
▽離婚熟廬期間の経過に離婚意思の確認を行います。(夫婦間に未成年の子がいない場合、離婚に関する案内を受けて1カ月過ぎた後に離婚意思の確認を行います。夫婦間に未成年の子がいる場合、離婚に関する案内を受けて3カ月過ぎた後に離婚意思の確認を行います)
▽未成年の子がいる場合、養育と親権者決定に関する協議書(または審判定本)を離婚意思確認申込みの際に提出する必要があります。
以上の手続は本来、韓国の家庭法院(家庭裁判所)の裁判官が離婚意思の確認を直接行う必要がありすが、在外国民の便宜を考慮し、在外公館を通じてできるようにした制度です。
なお、以上の手続を経ずに、日本の役所に離婚届を提出しても、役所はこれを受け付けますが、これが法的に有効か否かの判断は裁判上固まっていませんので、協議離婚をする際には、上記の手続を行うのが無難と思われます。
在日韓国人夫婦の協議離婚の手続はやや複雑なため、むしろ、離婚調停手続を利用する方が簡便と思われます。
離婚調停は夫婦の住所地を管轄する家庭裁判所に対し申立をし、各家庭裁判所の混み具合にもよりますが、大阪家庭裁判所の現状は、申立から約1カ月半後をめどに第1回調停期日があり、夫婦間に離婚等に関する合意があれば、同期日で調停を成立させる(離婚成立)ことが可能です。
その後、家族関係登録簿(旧戸籍謄本)に離婚の記載をするため、調停調書と翻訳文等の資料を提出すれば足ります。必要資料は総領事館のホームページにも記載されていますし、総領事館に電話で問い合わせれば教えて頂けます。
調停で離婚が成立しなかった場合、離婚訴訟を提起するか、一旦離婚を断念するかを選択することになります。
離婚訴訟を提起し、判決で離婚が認められるには、裁判所が離婚原因があると認定する必要がありますが、その認定は、韓国民法及び韓国の大法院(最高裁)の判例等に従うことになります。
一方が韓国人、他方が日本人の夫婦で、夫婦の居住地が日本国内にある場合、離婚については、日本法が適用され、離婚に必要な手続及び離婚原因の有無は、日本法に従います。そのため、手続は日本人夫婦と同様になります。
ただし、離婚当事者のうち在日韓国人の方は、韓国総領事館に離婚申告をする必要があります。