掲載日 : [23-02-01] 照会数 : 1264
事実婚における相続について
Q:事実婚における相続について
私は、在日韓国人女性です。夫婦同然に生活をきづいてきた伴侶の男性が死亡しました。私たちは半生をいっしょに暮らし、健やかで明るいごくふつうの家庭生活を共有していましたが、思うところがあって事実婚の関係でした。その男性が所有していた不動産を、私が相続することはできますか。また、その男性の年金を引き継ぐことができますか。
A:事実婚とは、事実上は夫婦として婚姻生活を営んでいるものの、婚姻申告(届出)をしていないために法律婚とは認められない夫婦関係のことです。事実婚についての準拠法については明文の規定がありませんが、婚姻の規定(法の適用に関する通則法第24条~26条など)を類推適用するというのが一般的な考え方です。もっとも、事実婚の成立要件について日本法と韓国法では違いがありませんので、いずれにしても、当事者間における婚姻意思の合致(主観的要件)と夫婦共同生活の実態(客観的要件)があれば、事実婚として認められます。
そして、相続については被相続人の本国法が準拠法となるので、被相続人が韓国国籍であれば韓国法、日本国籍であれば日本法が適用されます。韓国法においても日本法においても、事実婚関係の場合には、相続権も財産分割請求権も有しないとするのが判例です(最判平成12年3月10日民集54巻3号1040頁、大判2006年3月24日2005ドゥ15595)。ただし、韓国法においては、法定相続人がいないときには特別縁故者として相続財産の全部または一部を受けられる可能性があります(韓国民法第1057条の2)。また、相続財産が被相続人の名義であったとしても、夫婦が共同して家業を経営し、その収益から夫婦の共同生活の経済的基礎を構成する財産が形成された場合には、実質的共有財産として、事実婚関係にあった者が保護される可能性があります(大阪高判昭和57年11月30日判タ489号65頁など)。
ご質問の事例の場合には、あなたは、その男性が所有していた不動産を相続することはできませんが、その男性が韓国国籍であり、かつ、法定相続人がいない場合には、あなたは、特別縁故者として当該不動産を受け取ることができる可能性があります。また、上記のような一定の要件を満たす場合には、その男性との実質的共有財産として権利を主張できる可能性があります。
一方、事実婚関係であっても、社会保障の意味合いを持つ遺族給付(労災における遺族補償、厚生年金における遺族年金など)については、法律上の配偶者と同等の保護を受けることができます。