掲載日 : [23-02-01] 照会数 : 1042
海外旅行中の怪我は帰国後の治療費も補償されますか?
Q:海外旅行中の怪我は帰国後の治療費も補償されますか?
韓国から短期滞在VISAで日本に滞在する姉のもとに旅行にきました。旅行中に交通事故に遭い骨折をしてしまい、日本で治療を受けるためにVISAを延長し、日本で通院治療中です。しかし、言葉も分からないので韓国に帰って治療を受けたいと考えています。帰国し、韓国で治療を受ける場合も、治療費の補償として交通事故による賠償を受けることはできるのでしょうか。
A:法の適用に関する通則法17条は、「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。」と定めています。この点、交通事故は一般的に「不法行為」として処理されますから、日本で発生した交通事故の場合、被害者が外国人であっても原則として日本の不法行為に関する法律(民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」)が適用されることになります。
そのうえで質問にある「韓国で治療を受けた場合」の「治療費」ですが、日本での治療であれ韓国での治療であれ、当該治療行為に「必要性」や「相当性」があれば賠償が認められることになります。つまり、本質問に沿う形でお答えすると、帰国し、韓国で治療を受ける場合も、治療費を受けることは十分可能であると考えられるでしょう。
それではこの「必要性」や「相当性」をどのように立証していくことになるのでしょうか。例えば、韓国において日本と同様の治療行為を受けたような場合は、診療録(カルテ)や請求書、領収証などをもとにこれを明らかにしていくことになるでしょう。
他方で韓国での治療内容が日本において一般的でないような場合や、いまだ日本では承認されていない新薬や医療器具を用いて行われたような場合は、これらの書類に加えてその治療行為の有効性を説明する医師の陳述書を用意し、あるいはその治療の有効性について研究している日本の医師の意見書を用意するなどして治療行為の「必要性」や「相当性」を立証していくことになります(波多江久美子「外国人が本国で治療を受けた場合の治療費等」赤い本[1996年版]153頁参照)。
なお、診療録(カルテ)や請求書、韓国の医師が作成した陳述書等韓国語の文書を証拠として提出する際には、韓国語で書かれた原本に加え、その日本語訳を添えて提出することが必要になりますので注意してください。