掲載日 : [2016-12-07] 照会数 : 6180
学生と紡いだ韓国映画字幕…字幕翻訳家の本田恵子さん
[ 本田さんが監修した韓国映画「愛を歌う花」の1場面 c2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved. ] [ 本田恵子さん ]
神田外語大学(千葉市美浜区、酒井邦弥学長)の非常勤講師、本田恵子さん(42)は昨年から、アジア言語学科韓国語専攻の学生たちと韓国映画の日本語字幕制作に取り組んでいる。今回、自ら監修した「愛を歌う花」(配給=クロックワークス)には、学生と卒業生25人が参加した。7日に同大で「日韓フレンドシップ映画上映会」を開催。2017年1月7日から東京のシネマート新宿ほか全国で順次公開される。字幕制作に携わった学生の中に変化が出ているという。韓国語の字幕翻訳家として活躍する本田さんに聞いた。
プロへの挑戦後押し
「愛を歌う花」新春に一般公開
本田さんは同大で、映像翻訳に必要な知識と技術を学ぶ講義「韓国語映像翻訳法1・2」を受け持つ。字幕翻訳に興味はあるけれど、どうすればいいのか分からないという学生は多い。
「本物に触れる機会があれば、字幕翻訳家への道が具体的に考えられるのではないか」。仕事を通じてパイプのあった配給会社に話を持ちかけると、映画を提供してくれることになった。
学生たちは映画を観た後、割り当てられたパーツを訳す。「分からない言葉があれば、必ず裏を取れというのは鉄則」。字幕翻訳作業の中で調べることは、1/3のウエートを占める。手を抜くことは許されない。
字幕翻訳は簡単ではなく、勉強すればなれるという問題ではない。「最終的に日本語力の問題なんだとか、いろいろな気づきがあると思う」
本田さんは同大の韓国語学科出身だ。元々、日本と関連のある国の勉強がしたかったという。当時、教員だった父親から「あなたはアジアのことを知らないからもっと勉強したら」と勧められた。父親には在日の友だちがいた。でも本田さんは、なぜ在日が日本にいるのか理由も分からなかった。
「学校で知らされていない部分を知るためにまずは言葉から入って、歴史などを勉強した」
同大卒業後、通訳の仕事を探すが、当時、韓国語を使える職種は限られていたと話す。会社勤めをしながら、フリーになって通訳の道を探そうかと思っていた時、NHKBS2で「冬のソナタ」が放映された。その後、5年勤めた会社を退職。アルバイトで入ったのは、後にペ・ヨンジュンの日本マネージメントを担当する韓国エンタメ会社のIMXだった。
当初、通訳をしていた本田さんは、途中から字幕翻訳を頼まれる。だがやりたいのは通訳。字幕の勉強をしたこともないと上司に話すと「いいからやってみなさいよ」の一言。字幕制作ソフトを渡されても使い方が分からない。結局自分で探した制作会社に習いに行った。
字幕は、1秒4文字の制限がある。ひとつの台詞は2、3秒が目安。最大で6秒だ。「翻訳というより日本語の世界に再構築するという感じです。それもシンプル、かつ完結に。やはり日本語力がものをいってくる」と強調した。
昨年、字幕制作に参加した学生3人が、卒業制作に映画1本を個人で訳すことに挑戦している。初めてのことだ。在校生の女学生3人は、本田さんが制作会社で行っているプロの養成講座に通っている。「字幕翻訳者になりたいという学生が出てきた」と喜ぶ。
本田さんは、最初は韓国のことを知りたいと韓国語を始めた。そこから韓国に関係する仕事を続けてきた。
「毎回、自分は素質がないと思いながらやってきた。でも、あなた頑張りなさいよって言われているような気がする。いろいろな人がチャンスを与えてくれて今の私がいるので、『私もやりたい』という人には、チャンスをあげたいと思う。学生たちには頑張ってほしい」
<あらすじ>
1943年の妓生養成学校。ずば抜けた美貌と優れた歌唱力で最高の歌姫と称されるソユル(ハン・ヒョジュ)と、心に響く天性の歌声を持つ幼なじみのヨニ(チョン・ウヒ)、そして最高峰の実力を誇る作曲家ユヌと出会い、同じ歌と男を愛した時、運命が狂い始めていく。
(2016.12.7 民団新聞)